2013 Fiscal Year Research-status Report
絵画の中に現れた顕在的属性を作品解説と鑑賞教育に生かす
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24520179
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
吉村 浩一 法政大学, 文学部, 教授 (70135490)
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Keywords | 鑑賞教育 / 展示解説 / 美術館 / 博物館 / オノマトペ |
Research Abstract |
研究初年度である平成24年度から開始した「展示および展示解説の専門家に対するインタビュー」を継続し、25年度中には、金沢21世紀美術館の学芸員とエデュケーター、および北九州いのちのたび博物館の学芸員2名に対して実施した。美術館関係者と博物館関係者のバランスを取りながらのデータ拡充を実現できた。 2013年6月15日に兵庫県三田市で行われた日本展示学会において、連携研究者の大分県立芸術文化短期大学の関口洋美と連名で、「お茶会での茶碗鑑賞表現に表れた茶碗の顕在的属性」という論題で研究発表を行った。これは、大分県立芸術文化短期大学茶道部の全面的協力を得て前年度に行ったデータ収集を整理した内容である。 2013年8月18日に東京都千代田区で行われた日本教育心理学会総会において、チュートリアルセミナー「鑑賞教育における認知心理学」を主催し、講師として吉村および上記の関口洋美の他、千葉県立美術館研究員の東健一氏を招き、吉村の司会のもと,本科学研究の成果をベースにした発表を行った。吉村の「企画の趣旨」に続き、東による「千葉県立美術館の出張授業:学校と美術館の特性を活かし合った授業開発」、関口による「オノマトペを活用して作品鑑賞の言語化を促す」,そして最後に吉村の「作品に直接現れた属性を生かす鑑賞教育」という構成であった。チュートリアルの内容は2013年度の『心理学年報』に掲載された。 研究論文「UXデザインから捉えた美術館の展示解説(2)―実証実験と理論的考察―」を『法政大学文学部紀要』2013 67, 39-56.(関口洋美と共著)として発表した。 以上が,研究当初の枠組み内での活動である。これら以外に、美術館のみならず博物館での展示解説に関かかわることとして、ウェブ展示を視野に入れて、古典的心理学機器類の撮影と資料収集作業も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
美術館と博物館の展示解説法の違いに焦点を当てて,初年度は両館の関係者の人たちに対して、まずアンケート調査をおこなった。御茶会での茶碗鑑賞という現実場面を利用した鑑賞による発言の実際も収集できた。それを踏まえて本年度は、それらのデータを整理して学会発表や法政大学文学部紀要での論文発表もできた。展示や展示解説の専門家に対してのインタビューに重点を移し、データ量の拡大を実現できた。 さらに、展示解説対象を美術館と比較する目的から博物館展示にも広げ、独自の展示材料としてウェブ展示を前提とする独自の資料作成を進めることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度から行っている展示や展示解説の専門家に対するインタビュー・データをデータベース化し、それを生かして論文作成を行いたい。このインタビュー研究を進める上での課題は、研究倫理の観点からインタビューを受ける人が所属する組織や個人名を伏せた状態でデータ化することにしているが、そうした具体性が表面に出ないと,記述の趣旨がうまく理解できないことが生じている。そのような場合は、インタビューを受けた人に打診し、個々のケースについて表現の具体化を認めらもらえるかどうかを問い合わせる。認められない場合は、架空の具体的状況を提案し、それについて適否を求めることとする。インタビュー・データの充実とそれを活用した論文作成が最も重要な目標となる。 展示解説にどのような内容を盛り込むかという問題を、美術館の展示解説に閉じないで博物館展示も含めた問題に拡張させたい。そのために、独自に収集している心理学の古典的実験機器のデータをより充実させ、ウェブによる展示物解説の分かりやすさと魅力度を評価する調査を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
謝金を支払って雇いあげた人の都合で、勤務時間数が予定より少なくなった。 次年度に勤務時間数を増し、祖業量を向上させるとともに、謝金額を増したい。
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