2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世文学の文化基盤としての茶の湯文化に関する包括的研究
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24520203
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石塚 修 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10282287)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本文学 / 茶の湯 / 井原西鶴 / 近世文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本近世文学と日本を代表する伝統文化である茶の湯文化とが深い関係性を持つものであろうということは、およそ想定できることである。しかし、当時の茶の湯という文化が現在のように映像や画像資料で実見することができない以上、茶書といわれる作法書を通してその実態の把握に努める以外に方法はない。また、茶の湯文化特有の各流儀の存在により、横断的な茶書の把握が困難である学術環境を克服し、江戸時代の中後期の茶の湯文化の実態の解明をおこなうことは、日本近世文学の研究の進展に資するのみならず、茶の湯文化史の研究の促進にも大いに役立つと考え、今回の申請の研究を実施した。 その結果として、茶の湯文化を照射することで、先行研究で見落とされてきた表現の解釈や作品の意味についてあらた知見を何点か提示できた。 まずは、江戸時代の随筆のなかから「茶の湯」に関連する事項を抜き出してそれぞれに該当する部分についての検証をおこなった。 また、井原西鶴『万の文反古』巻一の四「来る十九日の栄耀献立」などは、これまでは実在の献立を模しているものと考えられてきたが、同時代の茶書である遠藤元閑『当流茶湯献立指南』との比較検討を通して、その献立がいかに文学的なフィクションとして綿密に創作されたものであるかが明らかになった。 さらに、松尾芭蕉の門人の俳諧師たちにも、少なからず茶の湯文化への造詣が見られることを、服部嵐雪『風俗文選』の俳文の精査をとおして解明した。
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