2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 泰明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60191813)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 新古今和歌集 / 和泉式部 / 百人一首 / 中世和歌 |
Research Abstract |
研究目的の三項目のうち、「1)『新古今和歌集』の文献学的研究」については、国文学研究資料館や京都市等で調査を行い、資料の収集に務めた。「2)『新古今和歌集』の注釈学的研究」については、若手研究者6名とともに『新古今和歌集』注釈作業を行った。「3)『新古今和歌集』古注の研究」については、国文学研究資料館・内閣文庫・出光美術館等で調査を行い、分析を行った。 研究成果としては、『平安文学をいかに読み直すか』(谷知子・田渕句美子編、笠間書院、2012年10月)184~210頁に、「和泉式部の歌の方法」を執筆・公刊した。これは、『新古今集』の歌人たちにもっとも文学的に深い影響を与えた平安時代女流歌人といってよい和泉式部について、その和歌の表現の中世的特質を解析したものであり、2)の注釈学的研究の成果を生かしたものである。さらにその研究を展開させ、3月30日にパリ市INARCOで行われた国際シンポジウムにおいて、「和泉式部の和歌の人称性」と題する招待発表を行った。また、「百人一首選歌の謎」『ユリイカ』1月臨時増刊号(2012年12月)は、『新古今集』の中心歌人、藤原定家の表現意識を、『百人一首』の選歌から考察したもので、2)および3)の研究成果が基盤となっている。なお、当該年度の公刊ではないが、『日本文学史 古代・中世編』(小峯和明編、ミネルヴァ書房、2013年5月)のうち第八章「新古今集と中世和歌」を執筆した。『新古今集』を中世和歌史の中で意義づけたものであり、2)および3)の研究成果を活用している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的として設定した3項目それぞれについて研究に進展が見られ、なおかつ公刊された研究成果に活用・反映させることができた。「1)『新古今和歌集』の文献学的研究」については、各所における調査および史料の収集によって、「2)『新古今和歌集』の注釈学的研究」の進展に不可欠の知見を得ることができた。これによって、2)も大幅に進めることができ、「和泉式部の歌の方法」「百人一首選歌の謎」の2本の論文を発表し、かつ「和泉式部の和歌の人称性」と題する国際シンポジウムの招待発表を行うことができた。3)『新古今和歌集』古注の研究」については、各所の調査により分析を行い、考察を深めた。その成果により、「百人一首選歌の謎」を発表し、「『新古今集』と中世和歌」の論考を執筆した。後者の論考は、25年5月に刊行された。
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Strategy for Future Research Activity |
「1)『新古今和歌集』の文献学的研究」については、これまでの研究からも、調査範囲をさらに広げなければならないことが判明してきている。版本などにも目配りをしつつ、より多様な伝本の調査・収集・分析を行う。「2)『新古今和歌集』の注釈学的研究」については、上記1)の文献学的知見および主として思想史的研究成果を活用しつつ、さらに注釈を進める。とくに神祇部・釈教部の分析が重要となる。3)『新古今和歌集』古注の研究については、当初の計画通り、『自讃歌注』『百人一首注』の調査・分析・考察をさらに進める。なお、考察の進展により、古注を対象とするのみでなく、『徒然草』などの散文作品も分析対象とすべきことが判明した。今後はこれらに対しても、調査・考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料の調査を目的とした出張のための旅費が必要となる。25年度は、京都市・新潟・九州方面などの出張を予定している。また資料の撮影・複写などのための費用(物品費・その他)が不可欠である。また、『新古今集』および『自讃歌注』『百人一首注』『徒然草』等に関連する文献資料の購入収集ために物品費の支出が予定されている。
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Research Products
(4 results)