2012 Fiscal Year Research-status Report
奈良・平安初期漢文書簡に見る敦煌書儀表現受容の史的展開
Project/Area Number |
24520210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西 一夫 信州大学, 教育学部, 教授 (20422701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 比出代 信州大学, 教育学部, 助教 (10631187)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 漢文学 / 漢文書簡 / 書儀・尺牘 / 表現受容 |
Research Abstract |
本年度の実施計画は「『高野雑筆集』語彙集成」「敦煌書儀語彙集成I(吉凶書儀篇)」の補訂と「敦煌書儀語彙集成II(朋友書儀篇)」本文校訂と語彙調査、さらに「敦煌書儀語彙集成」I・IIの本文検討、「『高野雑筆集』語彙集成」と「敦煌書儀語彙集成I」との比較検討の大きく2つの研究課題に取り組むことであった。 これまで継続してきた書儀語彙集成の補訂と本文校訂作業はおおむね庶幾の目的とする内容を終えることができた。これによって語彙集成の掲出本文を修正し、組み直しをおこなうことができた。これらの成果によって、研究のための本文としてきた趙氏の校訂本文との比較をある程度可能ならしめた点は大きな成果と言える。 後者の平安初期の漢文書簡表現との比較検討についても、これまでの成果検証の八割を終えることができた。具体的には空海の『高野雑筆集』並びに最澄の『消息往来』の検証をすべて終え、圓仁『入唐求法巡礼行記』の一部を終了している。本年度は『高野雑筆集』所載の唐僧義空の書簡につては十分な検討を加えることが出来なかった。その上で特に空海の書簡表現の特徴を取り上げて検証と考察をおこなった。その際、最澄の書簡表現との比較を行うことによって、表現の独自性の一端を解明できた。引き続き義空関係書簡の本文分析と注釈作業をおこない、本年度の成果である空海書簡の表現との比較研究による表現受容の実態を進めて行く予定である。 本年度の実施状況としては、研究分担者の成果とあわせて、平安初期漢文書簡の本文確定作業に一定の成果を挙げることができた。これらの成果については、順次学術研究として口頭発表ならびに研究論文として発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに交付を受けた研究助成において作成してきた語彙集成ならびに校訂本文を、より確実な内容に仕上げることが出来たのは、本年度の成果として大きな意義がある。β版として仮公開している本文資料を正式公開に向けた見通しをつけた。 また上記の本文に基づく語彙集成の補訂作業も並行して進めたことにより、第3版の語彙集成としての作業を終えた。さらにはテキストデータとしての語彙集成を、より活用しやすくするためのデータベース移行を次年度以降の作業として想定している。 さらに奈良朝の書簡語彙集成作成に向けての基礎準備である諸注釈集成の作業に見通しをつけることができた点も本年度の重要な基礎作業成果として位置づけられる。この成果をデータ入力して書簡語彙の判定基準作成に役立てることが可能となった。また古写本での語彙判定をおこなう上でも参考となる。 書儀・古写本の本文校訂をすすめる中で確認すべき校訂作業の指針を設定できたことも本年度の古写本本文の校訂作業での成果として特記できる事項である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、初年度の計画をほぼ予定通り実施できたことから、当初の計画を変更することなく、第2年次の計画を実施予定である。 具体的には前年度に準備作業を終えた「奈良朝書簡語彙集成」の語彙抽出を具体的に実施すると共に「平安初期漢文書簡語彙集成(β版)」の校訂と語彙抽出をおこなう予定である。 あわせて語彙修正毎の比較検討を順次実施して、相互の関係と特質とを明らかにする予定である。これによって相互資料の特質と史的展開のありように関する検討材料を得ることが可能になる。 これらの成果は昨年度果たせなかった国際学会での成果発表とあわせて学術論文としての公開を目指している。また分担者との共同研究としての成果発表をおこなう準備がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は平安初期漢文書簡の基礎資料収集と、これまでに実施してきた奈良朝書簡語彙集成の本文校訂を実施するための第1次資料(写本紙焼資料、正倉院文書写真資料)の収集を実施する。写本紙焼資料の入手手続に時間を要したため、数本の写本の資料を年度内に入手できず、次年度の予算にて入手することとなった。そのため本年度当初予算額の一部を25年度予算として使用することとした。なお、本年度見送った国際学会での成果発表に向けての旅費の一部が25年度予算として使用となり、重点的な使用予定ある。
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Research Products
(8 results)