2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520216
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 則雄 島根大学, 法文学部, 教授 (00252891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤澤 毅 尾道市立大学, 芸術文化学部, 教授 (20289268)
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (30515838)
木越 俊介 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (80360056)
菱岡 憲司 有明工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (10548720)
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Keywords | 日本近世小説 |
Research Abstract |
文政期読本16書目について作品解題を作成した。年度内に2回の共同研究会を開き(2013年8月31日、2014年3月23日)、この解題原稿をもとに、文政期読本の諸問題について討議を行い、文政期読本と実録との関係、文化初期の読本からの様式の踏襲、人情本との近接などについて解明した。結果、解題原稿の蓄積を進めることができたと同時に、これらを横断する文政期読本の問題を抽出する段階へと進むことができた。また出版事情、改題本、覆せ彫り等の実態も新たに把握するなど、具体的な成果があった。文政期読本が、文化期の読本の様式を基本的に踏襲しながら、造本から見ても、また構成など内容に関わる面から見ても、より緩やかな枠組みにおいて制作されていたという、具体的な実態が明らかになった。 なお上記の解題原稿は、最終年度に発刊予定の成果物『文政期読本解題』の原稿とするが、同書の中に収録する「文政期読本年表」についても、本年度行った書誌調査の成果に基づき、後印本、改題本の実態について検討し、また新たに文政期出来の読本と認めるべき書目が見出されたことなどから、それらを反映させ修訂を行った。 論文による研究成果公表の主なものは次の通りである。読本にとって素材、様式面における基礎となった実録、勧化本など先行作品についての論(田中、藤澤、菊池、天野)、当文政期読本の中心作者である曲亭馬琴作品の論(大屋、三宅)を公表し、読本作品の翻刻も行った(藤澤)。 また当文政期を含む江戸大坂の出版流通の問題を中心に論じた著書を刊行した(木越)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に公表する『文政期読本解題』の原稿の蓄積を予定通り行うことができた。即ち文政期読本16書目の解題、および「文政期読本年表」の増補改訂である。なおこれらの原稿には、本年度共同研究会における討議の結果が反映されている。 本年度の調査および共同研究会での討議により、文政期読本全体に関わる問題点を整理することができた。このことは、上記成果物に収録する総論部分の基礎をなす。 また上記成果物編集に向けて、解題の書式を統一し、文政期読本作品リストを再精査し、刊年の確定などを行い、現在把握できる研究対象書目を絞り込み、残された書目について今後の解題作成計画を策定した。 また各作品に即した調査と分析の結果は学術誌、著書を通じて公表したが、これも当初目標とした質と量に達したと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までと同様の方法で調査研究を進める。即ちチーム全員が解題原稿を作成し、これをもとに共同研究会を開催して討議を行う(2014年8月、2015年3月予定)。未調査、未収集の書目は数が限定されているので(既に特定済み)、本年度前半期に原本調査、マイクロによる収集を行う。既に全ての書目について執筆分担を決めているので、2014年末を目標に一旦原稿を集約する。ここから必要な再調査、原稿の修訂などの作業段階へと入る。かくて2015年度内に成果物『文政期読本年表』を完成させる計画である。 なお本年度より、中尾和昇(関西大学非常勤講師)を研究協力者に加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
下の(使用計画欄)に記す通り、26年度はマイクロフィルム複写による調査収集費が多く見込まれること、また27年度(最終年度)に発刊予定の成果物(『文政期読本解題』)の判型・書式等を決めて刊行経費を概算する段階に至ったことから、25年度の経費使用を抑制し、26年度の調査収集費、27年度の刊行費の確保に備えることとした。 近世小説関係図書の購入費、年度内2回の共同研究会開催および資料調査収集のための旅費、撮影補助・資料整理のための謝金、マイクロフィルム複写費を使用する。本年度収集予定の書目は、点数は多くはないがコマ数の多いものが含まれること、また成果物の原稿集約作業の段階に入るにあたり、原稿修訂に即した調査収集が改めて必要になる書目が生じることが予測されることから、マイクロフィルム複写費を多く見込んでいる。国文学研究資料館、国会図書館等のマイクロフィルムを利用することを基本とするが、古書で原資料を入手することが可能である場合は、購入を行う。
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Research Products
(12 results)