2014 Fiscal Year Research-status Report
敵討ち物実録の流布および他ジャンル文芸への影響と、実録の「事実」性に関する研究
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24520219
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (30515838)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 実録 / 敵討ち / 近世文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、昨年度につづき、平成24年度に作成した敵討ち物実録のリストに基づき、敵討ち物実録の収集と内容分析を行った。だが、収集については、調査先との日程調整の都合がつかなかったことにより、現地調査よりも、マイクロフィルム等の閲覧・複写収集の方が主となった。なお、昨年度新たに加えた調査先である姫路市文学館所蔵の敵討ち物実録については、今年度も引き続き調査収集を行った。 内容分析においては、これまでに収集している敵討ち物実録の中で、実説の事件にたどり得ない、明らかに創作とみなせるもののストーリーの作られ方に注目し、とくに『荒川武勇伝』という実録を視点として、その作られ方の特徴を考察、学会で口頭発表を行った。 また、『誠顕常陸帯』と題する敵討ち物実録と読本『現過思之柵』との影響関係を見いだし、発表論文において指摘している。 この他、昨年度につづき、島根大学図書館堀文庫蔵の浮世草子『敵討会稽錦』の翻刻を行い、巻2、巻3部分を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は本来最終年度として、計画を達成させるべきであったが、資料の調査先との日程調整がつかなかったことと、申請者の体調不良の事情があり、研究に従事できない期間があったため、遅れが生じてしまった。 その反面、敵討ち物実録のうち、実説にたどり得ない、創作の敵討ち物実録の作り方について、ひとつの考えをまとめることができ、学会で口頭発表できたことや、他ジャンル文芸である読本と影響関係があると言える実録を一例加えることができたことなど、研究目的を達成させるための歩は確実に進んでおり、平成27年度は、ひとつの成果を出すことができるものとの感触を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度が最終年度ということで、研究活動の総括的な一年とする。これまでに収集した敵討ち物実録の資料を分析し、とくに創作と考えられる敵討ち物実録の類型を抽出し、論文として発表することを計画している。また、未発表状態であった敵討ち物実録の解題集を作成することを考えている。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、今年度も実録写本の調査を予定していたが、いくつかの調査先との日程調整がつかず、今年度の調査を断念せざるを得なかったことと、研究代表者が体調を崩してしまい、その期間の調査・研究を中断しなければならなかったために、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、今年度予定していながら出向くことができなかった調査先へ調査に行くことと、必要に応じて複写費用や図書購入費用に充てる予定である。また、これまでの研究期間と次年度に調査した実録の解題報告書の作成も考えている。
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Research Products
(3 results)