2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520235
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
紅野 謙介 日本大学, 文理学部, 教授 (20195671)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 准教授 (30579107)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 検閲 / 植民地支配 / 帝国 / 自主規制 / 国際情報交換 / 韓国 / USA |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年には、日本側から紅野謙介・高榮蘭、韓国側から鄭根埴(ソウル大学教授)、韓基亨(成均館大学教授)、李恵鈴(同左)の編集による論集『検閲の帝国 文化の統制と再生産』(新曜社、2014年8月刊、478頁)を刊行した。この出版物の製作費については、日本大学文理学部学術出版助成の補助を得て、内容的には本科学研究費補助金および日本大学人文科学研究所共同研究費をもとに重ねられてきた研究実績をもとに作成した。韓国語論文の翻訳作業に本補助金の一部も使用させていただいた。 また刊行後の検証を兼ねて、8月半ば、ソウルの成均館大学において合評会を開催、韓国内の研究者のみならず、アメリカからも研究者が参加し、同書の達成点と今後の課題について議論した。韓国側でも本書所収の日本側論文を翻訳し、韓国語版を刊行する計画が進んでおり、合評会後には契約した出版社との打合せも行った。ただ、その後、翻訳作業の難航が伝えられ、2015年3月現在ではまだ刊行されていない。作業中とのことである。この韓国語版の刊行をへて、ようやく本研究もひとつの節目が来ることになるが、日本の韓国植民地化時代を中心としたテーマから、戦後の日本および韓国における検閲と文化の研究も本格化することとなった。その次なる課題に向けて、必要な資料等の入手を行った。 なかでも中心となるのは、戦後の日本韓国におけるアメリカの存在であり、またアメリカと結び着いた日本、韓国それぞれの政府の協働「検閲」制度の問題である。それぞれは異なる思惑をもちながらも、結果的に戦後社会における「検閲」制度を協働してつくりあげることになった。それまでの目に見える暴力的な「検閲」と異なり、自主規制や自己検閲への指向を強くした目に見えない「検閲」の成立と稼働の実態をとらえる研究がますます必要になってきている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果のひとつとして日本語版『検閲の帝国 文化の統制と再生産』をまとめることはできたが、韓国側にゆだねた韓国語版の刊行が遅延している。編集作業の遅れによるものだが、日韓両言語版が出て、初めて総合的な成果のまとめと言える。より正確で、互いの見解と相違点も具体的に見えてくると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
韓国語版の刊行については、相手の研究者集団に任せざるを得ないので、ねばりづよく督促をつづけていくことになる。その刊行がなった段階で、最終的なまとめの会合をもつか、テレビ会議などによる意見交換の機会を持ちたい。両国研究者を交えての研究はこれで一区切りとなるが、戦後社会における「検閲」制度の質的な変容については継続的に資料収集とその分析を重ねていく予定である。
|
Causes of Carryover |
成果のひとつである『検閲の帝国 文化の統制と再生産』日本語版を刊行したが、同時に刊行予定であった韓国語版の刊行が遅れた。双方の版が出たところで、最終的な意見交換と次の課題に向けての打合せを行うため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
韓国語版の刊行時期によるが、双方の意見交換と打合せを日本で行うときの通訳経費、あるいは部分的な渡航費に使用する予定である。韓国側研究者の方でその経費が捻出できるようであれば、次の課題に向けた資料収集にあて、最終的な実績報告書作成に向かいたい。
|
Research Products
(4 results)