2013 Fiscal Year Research-status Report
アイルランドのナショナリズム:ヤング・アイルランドから復活祭蜂起を軸として
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24520320
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三神 弘子 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (20181860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 重夫 早稲田大学, 法学学術院, 名誉教授 (00130873)
及川 和夫 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50194056)
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Keywords | アイルランド / ナショナリズム / フィーニアン運動 / パーネル / バラッド文学 / アイルランドロマン主義 / 復活祭蜂起 |
Research Abstract |
三神は、引き続き復活祭蜂起をテーマにした演劇の分析、検討を行った。復活祭の一週間に起こったできごとを克明に舞台化したジョンストンの『鎌と日没』(1958)とオケイシーの『鋤と星』(1926)、マーフィーの『パトリオット・ゲーム』と並列させることによって、それぞれの作品が書かれ初演された時代の文脈をあきらかにした。また、H24年度の研究成果である、『白人女通り』に見られる1916年について研究発表を行った。 清水は、ジョイス以降のアイルランド文学の中で重要な位置を占めるフラン・オブライエンの散文、ならびにジョン・モンタギュの詩にみられる政治的言説の分析、検討を行い、二人の作家を文化的政治的文脈に位置づけた。また、19世紀後半以降、アイルランド人にとって大きな選択肢であった移民の問題を取り上げ、アメリカにおけるIRBの活動、フィニアンの政治活動に関して検討を加えた。オブライエンに関する研究は、『アイルランド文学 その伝統と遺産』に収録予定。(2014年出版予定) 及川は「サミュエル・ファーガソンとアイルランド民俗学」と題した論文で、アイルランド併合(1800)以後の時代、すなわちカトリック解放運動、リピール運動、ヤング・アイルランド、フィニアン運動、アイルランド議会党の土地運動、自治運動といった激動の時代を生き、アイルランド文学、民俗学、考古学の勃興の渦中を経験したサミュエル・ファーガソン(1810-1866)の文業を検討し、それと密接な関係にあったアイルランド民俗学の進展を考察した。またロマン派講座で民間伝承とロマン派文学の関係を論じた。 また、University College DublinのDr PJ Mathewsを招聘し、意見交換を行うとともに、公開講演「アイルランド文芸復興の再生」を実施した。(司会は及川が担当。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三神は、復活祭蜂起を扱った劇作品を順次分析、検討することにより、復活祭蜂起の受容が時代によってどのように変化してきたか、その概要をあきらかにしつつある。 清水は、ジョイスの政治的言説の分析を進めると同時に、ジョイス以降の作家たちを、ジョイスとの関連で位置づける試みを進めている。 及川は、H24年の『ネイション』紙におけるレディ・ワイルドのナショナリスト的文学活動に続いて、H25年は民俗学的研究やアイルランド詩翻訳に内在する党派性を解明することができた。この点は、H26年度のテーマである19世紀末から20世紀初頭の前段階の文化的、政治的マトリックスとして、さらに発展させる予定。
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Strategy for Future Research Activity |
三神は、マーガレット・ダーシーとジョン・アーデンの共作『ノン・ストップ・コノリー・ショー』(1975)を分析の対象とし、1970年代における復活祭蜂起の受容について検討した上で、アイルランド演劇に見られる復活祭蜂起のテーマについて、総合的にまとめる。 清水は、ジョイス、小平以遠、モンタギュの活動に、19世紀半ばのフィニアン運動、その後のパーネルの活動と挫折がどのように影を落としているのか、総合的に研究する。 及川は本研究の総決算として19世紀末から20世紀初頭の時期を取り上げる。この時期はアイルランド議会党の活躍や土地戦争の進展で、遅ればせながらアイルランドが近代化しつつあり、徐々に中産階級層が形成された。近代化には必然的に個我の形成というロマン主義的現象が生じる。この時期のアイルランド文学、文化をアイルランド独自のロマン主義の形成過程という視点で再考する。 H26年10月に予定している国際シンポジウムの開催へ向けて、各自研究の集大成をめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
及川は、H25年度は学内の課題研究費を受託できたので、予想よりも資料購入費をまかなうことができた。 繰り越し分は、及川のアイルランドでの研究主張(資料収集、研究打ち合わせ)に充当させる。
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Research Products
(3 results)