2012 Fiscal Year Research-status Report
近代における日本古典文学の中国語訳に関する比較文学的研究
Project/Area Number |
24520405
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University of Community Service and Science |
Principal Investigator |
呉 衛峰 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90458159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西槇 偉 熊本大学, 文学部, 准教授 (50305512)
李 哲権 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (70306455)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本古典文学 / 中国語訳 / 翻訳論 / 国際研究者交流 / 中国:台湾:香港 |
Research Abstract |
平成24年度はおおむね計画通りに研究を進めた。各参加者については、詳細は以下のようになる。 【呉衛峰(研究代表者)】平成24年度は銭稲孫の人生と翻訳を中心に調べた。まず、青島大学の尤海燕先生の協力のもとで、同大学の日本語専攻および中国古典文学専攻の学生・大学院生百名近くを相手に、読者受容の角度から銭稲孫と豊子愷の源氏物語翻訳についてアンケートを行い、有益な分析結果を得た。つぎに、浙江省桐郷市にある豊子愷記念館で豊訳源氏の手稿の写真を部分的に確認できた。それから、銭稲孫の生涯、とくに日本との関係に関する資料を調査し、幾つかの不明点を明らかにした。最後に、銭稲孫と豊子愷の源氏訳を比較し、銭稲孫の異化翻訳の手法とその意義を分析して論文を発表した。平成25年度は近世・近代の作品の中国語訳を中心に調査分析する予定である。 【西槇偉(研究分担者)】夏目漱石『草枕』所収の和歌や俳句の翻訳に注目し、豊子愷が翻訳を行なった1950年代半ばの中国における日本文学翻訳の状況を調査し資料収集する一方、みずから中国詩の日本語翻訳を試みて発表し、平成25年度にはその翻訳実践を本科研費研究と関連させて理論的に纏め上げる予定である。 【李哲権(研究分担者)】清末の厳復、林(糸予)、梁啓超に始まる本格的な外国書籍の翻訳が孕む問題をふまえながら、民国期における魯迅と梁実秋らの翻訳論争について調査し資料収集して、近代中国の翻訳論の成立の分析を進めている。 【頼衍宏(研究協力者)】台湾の林文月による『伊勢物語』の中国語訳(1997)を中心に考察を進めながら、何季仲の『日本小倉百人一首和歌中訳詩』(2007)で行なわれた「模倣的対応」的な翻訳手法を詳細に分析してその意義を評価し、同訳の第三版の序言に盛り込んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画に照らして、おおむね順調に進展している。【呉衛峰(研究代表者)】計画の大半が遂行されている。銭稲孫による日本の近世作品の翻訳の研究は平成25年度に延ばす代わりに、当初では平成25年度に実施予定の豊子愷訳『源氏物語』の手稿の確認は一年早く実施できた。また、青島大学で行なわれたアンケートも予定外の収穫である。 【西槇偉(研究分担者)】予定された調査は継続されている一方、中国詩の日本語訳を発表し、本研究に膨らみをもたらした。 【李哲権(研究分担者)】予定された調査は行なわれており、平成25年度に発表する予定である。 【頼衍宏(研究協力者)】予定された研究は遂行されている一方、当初では平成25年度に実施予定の何季仲訳『百人一首』の研究を繰り上げ、出版社に頼まれて何訳の第三版の序言の形で発表することになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、いままで培った成果をもとに、関係者が緊密に連絡を取り合い、それぞれが収集した資料等をチームワークで共有しながら更なる成果を出す予定である。 とくに中国語圏(中国本土、台湾、香港)の翻訳者および翻訳研究者との国際交流を行いつつ、研究成果を実際の日本古典文学の中国語訳の実践に応用する努力をしなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に使いきれなかった研究費は次年度は物品費に当てる。
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