2013 Fiscal Year Research-status Report
言語外情報との関係から探る省略要素の復元メカニズムの研究
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24520414
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
奥 聡 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (70224144)
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Keywords | 項削除 / 情報構造 |
Research Abstract |
2013年度は本研究課題の2年目で、引き続き資料の収集と分析を行うと同時に、現時点での成果を発表した。 2013年10月には、日本英文学会北海道支部大会において、研究発表を行った。そこでは、日本語名詞句の削除現象に対する項削除仮説(Oku 1998)に対する、対抗仮説として近年活発に論じられている「動詞残留型動詞句削除仮説」(Otani and Whitman 1991, Funakoshi 2012,Shimomura 2012)を取り上げ、Funakoshi/Shimomuraの挙げているデータは、データ収集時のコントロールが十分ではなく、「項削除仮説」の反例にはならないことを論じた。なお、本内容は日本英文学会Proceedingsに発表される予定。 さらに、2013年11月の日本英語学会全国大会のワークショップ(「空項の諸問題をめぐって」)では、少なくとも日本語においては、「項削除」と「動詞残留型動詞句削除」の両方の操作が共存するか否かについて、それぞれを支持する論拠と反対する論拠とを論じた。その中で、「動詞残留型動詞句削除」操作が日本語に存在するか否かにとって、決定的となると考えられてきた様態副詞の復元解釈の可能性に関して、情報構造上の条件を正確にコントロールした上での事実の検証を行う必要性を指摘した。 また、情報構造の観点からWh項の項削除が不可能であることが説明できることを提案。さらに、Shimomuraが挙げている、ゼロ項のsloppy読み解釈とstrict読み解釈の違いに関しては、動詞残留型動詞句削除という操作を用いなくとも、ゼロ代名詞proが統語に導入される操作と、項が削除される操作とのコストの違いによって説明できる可能性を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に記載したとおり、おおむね順調に進み、全国レベルでの発表により、多くの研究者からのfeedbackも得られている。その中から、下記に記すような具体的な課題もいくつか明確になってきている。full paperとしての論文という形にまでまたまとまっていない点が今後の課題。
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Strategy for Future Research Activity |
項削除(そして、動詞残留型動詞句削除操作の可能性も含め)、Saito (2007)などの提案する純粋に統語的なメカニズム(素性一致のあるなし)による説明に加えて、情報構造に関わる観点がどのように関わってくるかをより詳細に検討していく予定。特に、副詞的な要素に関しては、英語などにおいても動詞との素性一致は通常観察されないにも関わらず、「副詞句削除」という現象は必ずしも一般的に認められていない。このことを原理的に説明する方向性として、随意的要素である副詞の文中での情報機能と、削除という現象が持つ情報機能との関係を丁寧に検証していく必要があると思われる。この問題に関しては、2014年5月の日本英文学会全国大会のシンポジアムにおいて発表する予定。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、今年度の使用額は600,000円。昨年度より、消耗品の端数により生じた1,000円を繰り越している。 今年度は、当初の計画通り、物品費150,000円、旅費250,000円、謝金等130,000円、その他70,000円合計、600,000円に、その他に1000円を加えて、601,000円を使用する計画
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Research Products
(5 results)