2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520505
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中井 幸比古 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10221441)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 類別語彙 / アクセント / 京阪式 / 中央式 |
Research Abstract |
京阪式(中央式)諸方言に関する従来のアクセント調査報告のうちから、(1)類別語彙を中心とする少数語彙を扱うもの、(2)辞典形式の多量語彙を含む資料の、両者について、資料収集および若干の整理を行った。 このうち、(1)類別語彙にほぼ限定される資料については、近畿から四国にかけてのアクセント調査報告の、網羅的な収集をすすめるとともに、いくらかの整理を行った。 (2)方言辞典については、当該年度において、各地の方言辞典で、アクセント記号が付けられているものについて整理を行った。方言辞典によっては、一応アクセント記号が付けられてはいるものの、すべてのアクセント型を区別していない、不完全な記付け付しかなされていないものもあった。これらは、以前ならば資料価値が低いとして利用せずにすませることになったであろうが、方言語彙の衰退が顕著な昨今、新たな調査が困難な語彙も多く、こういった資料も貴重である。そのため、可能な限りこういったものも利用する方向で整理を進めた。近世以前のアクセント資料についても、このような不完全な記号付けがなされた資料もあるわけで、アクセント記号付けにおいて、どのような問題が生じがちなのか、なぜそのような記号づけがなされるのかという問題を考える上でも有用な資料となる。さらに、方言を扱った文献に断片的にアクセントに言及するものもあるが、そういったものも、できるだけ収集するように努めた。 ただし、当該年度においては、整理された資料を基にした考察はほとんどできなかった。 また、私自身が以前行った調査の整理については着手はしたものの、未だ本格的な整理には至らなかった。新たな臨地調査については、わずかに京都方言について行ったにとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては、当該年度につき、類別語彙を中心とする少数語彙を対象とする先行調査報告を中心に扱うとしていた。そして、それに従って、10種類前後の資料の整理を進めた。なお、個別の資料の整理の段階にとどまっており、全体を俯瞰しする段階にまでは至らなかった。 しかしながら、当該年度においては、資料整備の面に関しては、これだけでなく、多くの語彙を含む、方言辞典形式の先行文献についてもいくらか整理を進めることができた。具体的には、中央式方言関係2文献と全国的な方言調査報告の1文献を処理することができた。いまだ考察には至っていないものの、この点は当初の計画よりもかなりの進展が見られたと判断する。 反面、私自身の調査結果の整理については、申請時の計画よりも遅れている。まだ、音声ファイルの処理がまだ完全に終わっていない段階である。今後できるだけ早めに処理を終了し、聞き取り・整理を進めたい。 また、新たな臨地調査については、わずかな分量しかできておらず、いまだ不十分な状態である。これについては方言衰退の著しい昨今、高齢で適格な話者を新たに見出すのが困難である、ということも影響している。しかし、可能な範囲で調査を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まずは、資料の整理・整備を進めたい。先行の、少数語彙のアクセント調査と方言辞典形式のものの、いずれについても、昨年度に整理がかなり進んだものの、まだ終わっていない。これらの整理を一層すすめたい。とくに、辞典形式のものには重要な文献が残っており、この資料整理に最重点を置きたい。また、私自身の以前の調査結果については整理が非常に遅れているので、できるだけ作業を進めたい。 そして、これらの作業を通して、考察を行うための足固めをすることをめざす。言うまでもなく、最終的な目的は、整理された資料をもとに考察を行うことにある。 方言辞典形式のものについては、上記のように、アクセントに関して、非常にすぐれた資料から、ごく部分的にしか使用できない、不完全な記号づけしかなされていないものまで、さまざまなものが存在する。このうち、不完全ながらアクセント表記がある資料の扱い方について考察を深めたい。こういった資料は、伝統方言衰退の著しい昨今、それなりの利用価値があるものと考えている。また、アクセント型の知覚の研究ともつながる可能性がある。 また、個々の語について、過去の文献資料から明らかになっているアクセントとの突き合わせ作業もできるだけ早く開始したい。 新たな臨地調査については、上の各種作業を進めてなお余力がある場合に行いたい。新たな臨地調査も重要ではあるが、徐々に、過去の調査のほうがどちらかというと重要になってきている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、過去の資料整理のための謝金を中心として使用する予定である。主に、辞典形式のものに関する作業を一層進展させるために使用したい。昨年度の整理の進捗状況から考えて、この作業にはまだかなりの労力を要するものと思われる。 また、音声ファイルや、整理した結果をまとめたエクセルファイルを扱うための、若干の消耗品・備品・ソフト類の購入にも使用したい。また地図化を行うためのいくらかの消耗品類の購入を考えている。 アクセント史関係の資料の、若干の購入も計画している。 さらに、既に刊行された資料の整理作業や、私自身の調査結果の整理を行っても、なお余裕があれば、夏季または、2~3月ころに、四国数地点へ2~3泊程度の調査を行いたく、そのための調査旅費としてもいくらかを使用したいと考えている。
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