2014 Fiscal Year Research-status Report
意味・統語・形態の総合的観点から行う古代日本語の副助詞の研究
Project/Area Number |
24520508
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
小柳 智一 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (80380377)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 副助詞 / 統語 / 語形成 / 文法変化 / 方向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、副助詞の統語・形態について考察を行った。1つは、一見すると副助詞とは無関係な、上代に見られる「名詞+じもの」という語句についての研究で、この研究を通して、程度の副助詞句が統語的に形成される筋道を示唆できた。その成果は「「じもの」考―比喩・注釈―」(稲岡耕二監修、神野志隆光・芳賀紀雄編『万葉集研究』35、p.247-284、塙書房、2014.10)に発表。もう1つは、これまでにほとんど先例のない副助詞の形態論的考察を行った。これについては近々公刊予定。 次に、前年度に引き続いて、文法変化に関する研究を進めた。1つは、前年度に口頭発表した内容を論文にし、発表を行った学会の機関誌に発表した。「言語変化の傾向と動向」(日本エドワード・サピア協会『日本エドワード・サピア協会研究年報』28、pp.17-27、2014.3)である。これは一昨年度の研究成果を補完するものである。2つめは、今後の研究のための基礎として、最近の当該分野のキーワードである「主観」「客観」「間主観性」という用語を、先行研究を踏まえて詳細に検討した。その成果を「「主観」という用語―文法変化の方向に関連して―」(青木博史・小柳智一・高山善行編『日本語文法史研究』2、pp.195-219、ひつじ書房、2014.10)として発表し、これらが文法変化を考える上で期待されるほど有効な概念・用語でないことを示した。3つめは、文法変化の方向性について、どのような傾向が見られるかを明らかにした。次の口頭発表がその成果である。「文法変化の方向と文法的意味の記述」(関西言語学会第39回、2014.6.15、於大阪大学)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、副助詞研究に関する文献収集、用例採集を継続して行った。前年度から始めた副助詞の形態論的研究に一定の成果を出すことができ、論文の刊行が確定している。また、まだ刊行には至らないが、江戸時代の助詞研究について通説と大きく異なる新見解を得つつあり、将来の助詞研究史に貢献するものと期待している。 一昨年度から始めた文法変化の研究も予定を上回って進めることができた。公にできたものだけでも「言語変化の傾向と動向」(日本エドワード・サピア協会『日本エドワード・サピア協会研究年報』28、pp.17-27、2014.3)、「「主観」という用語―文法変化の方向に関連して―」(青木博史・小柳智一・高山善行編『日本語文法史研究』2、pp.195-219、ひつじ書房、2014.10)、「文法変化の方向と文法的意味の記述」(関西言語学会第39回、2014.6.15、於大阪大学)がある。その他、次年度に刊行予定の研究が複数ある。 以上の研究成果が得られたので、上記のように評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、副助詞に関する文献収集、用例の採集と点検を継続して実施する。その一方で、一昨年度から始めた文法変化の研究をさらに発展させる。この研究が進捗する過程で、副助詞を個別の現象として狭く閉じて捉えるのではなく、一般的な文法変化の視野の下で捉えることの重要性がますます明らかになってきた。その中で、副助詞の一般性と真の個性の両方を明確に把握できると考えられる。文法変化の研究を進めることによって、今後の副助詞研究にとって有効な視点および足場が多くもたらされることが確信され、また、現在は材料や機会において研究環境が整っているので、この研究をさらに推進することにする。
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Research Products
(4 results)