京都府口丹波地方の方言敬語の動向

2012 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 24520515
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: Kobe Gakuin University
• Principal Investigator: 辻 加代子 神戸学院大学, 経済学部, 准教授 (30514723)
• Project Period (FY): 2012-04-01 – 2015-03-31
• Keywords: 方言 / 敬語 / 方言敬語 / ハル敬語 / テヤ敬語 / 敬語変化 / 第三者敬語

Research Abstract

現代日本語の敬語の一般的動向とは異なる特質を持っていることが予想される京都府口丹波地方の方言敬語の展開を調べるという研究目的にあわせ、今年度は、まず、予備調査として、当該地域の社会文化状況や、言語状況について記された文献を収集し、調査地の選定や調査票の策定を行った。その上で、亀岡市市街地、亀岡市南西部の曽我部町、北部の千歳町、南丹市園部町の4地点で調査を実施した。各地点の調査方法と対象者は以下のとおりである。
亀岡市市街地…60代男女・70代女性への面接調査、および、60代女性と70代女性による自然談話の収録。亀岡市曽我部町…70代男女への面接調査、亀岡市千歳町…60代女性と馬路町出身在住の60代女性への面接調査、南丹市園部町…30代男性、60代男女、70代性女性への面接調査
面接調査では、動詞述語の敬語運用について詳細かつ網羅的に調べた他に、美化語や京都市で盛んな「お～さん」のような言い方や～ドス・～オスのような丁寧語などについても調べた。また、テヤ敬語（「行ってや」「読んでや」のような言い方）をよく使用する話者を対象として、テヤ敬語の活用変化や承接関係についても調べた。
調査の結果、全地点でハル敬語（ア段接続、「行かはる」のような形）は盛んに使われていること、テヤ敬語は園部町の高年層女性、亀岡市市街地・曽我部町の男性が使用していること、男性は軽卑語ないし親愛語とされるヨルも使用していること、ハル敬語・テヤ敬語・ヨルとも意味・機能に地域差と属性差があることがわかった。また、高年層話者は一般に美化語の類をよく使用し、園部町の話者は～ドス・～オスも使用していることがわかった。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

計画していた亀岡市市街地での20代～50代話者への調査が実施できなかった。これは、適切な話者を捜すことが出来なかったことによる。これまで知り合いなどのつてを通じて捜してきたが、活躍層の協力を得ることは難しいようである。どうしても協力者を見つけることが出来ない場合、公的な機関に協力をお願いしようと考えている。
なお、他の4地点での調査を展開できたことは、平成24年度の計画以上の進展であり、こちらも紹介者の協力のお陰である。これらの地点で調査を実施できたことにより、テヤ敬語の使用に地点間、属性間の違いが大きいことがわかるなど、今後の調査に資する知見が得られた。

Strategy for Future Research Activity

平成25年度8、9月、および2、3月に、亀岡市市街地での20代～50代話者への調査をできるだけ進める。
園部町の高年層話者による自然談話の収録を行う。これを行えば、4月に実施済みの70代男性、30代女性への面接調査とあわせて、園部町で計画していた調査は完了することになる。
亀岡市近郊の調査に関しては、曽我部町、千歳町、馬路町の残りの属性を対象とした面接調査、新たな地点として大井町、千代川町での面接調査を、また、地点を選んで自然談話収録を行う。平成26年度には、亀岡市本梅町あたりでの調査も行いたい。
収録した談話については文字化を委託し、できあがったものをさらに整備した上で、分析の方針をたてる。
現在わかっている範囲でも、ハル敬語やテヤ敬語の意味・機能に地点や属性による異なりが大きいので、見落としのないように留意して、いろいろな角度から詳細に記述するように努める。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

本年度収録した談話の文字化の委託を行っていなかったので、次年度、他の収録分とあわせ委託する。