2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520538
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
中安 美奈子 浜松医科大学, 医学部, 教授 (80217926)
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Keywords | 時空間体系 / 中英語 / 歴史語用論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中英語における時空間体系を歴史語用論の視点から体系的に分析することである。時空間体系には語用論的なファクターが密接に関わっているにもかかわらず、歴史的なデータにおいては、語用論的な分析はいまだ不十分であると言わざるをえない。時制や人称代名詞といった時空間に関する文法範疇や形式に着目し、言語行為等のミクロなレベルにとどまらず、談話等のマクロなレベルに踏み込んだ分析を行い、こういったファクターが相互にどのように関連しているのか、また、談話においてどのように展開するのかについて検討している。 本年度は、時空間体系を包括的に分析するための土台を形成することを試みた昨年度の研究結果を踏まえ、時間体系、空間体系の分析を詳細に行った。チョーサーのコーパスにさまざまなファクターを取り込むことにより、量的・質的な分析の精密化を試みた。話者の社会言語学的なファクターと時空間体系との関連を分析した。また、談話分析の観点から、物語のプロットや、中英語の文化的・学問的背景(天文学、占星術等)と時空間体系がどのように関連しているのかについて検討を行った。さらに、歴史語用論に関する文献を調査・検討することにより、基本概念や方法論等を含めて明らかにすべき問題点を確認した。 来年度については、これまでの研究結果を踏まえ、時間体系と空間体系における分析を精密化し、両体系を関連づけながら、中英語の時空間体系に関する一定の結果を得ることを期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
散文について分析を行った論文が現在投稿中である。また、韻文、韻文と散文の双方をコーパスとして分析を行った研究については、研究発表を精力的に行っている。 当初の予定では、時間体系、空間体系をそれぞれ分析した後に、それぞれの体系を相互に関連づけた時空間体系全体に関する分析を行う予定であったが、早い時期に本研究全体の見通しを得た方が、より効率的に研究の目的を達成できるという観点から、試験的に時空間体系全体に関する分析を行った。これが功を奏し、時空間体系を統合的に見る視点を得ることができ、また、分析をさらに精密化することにつながった。一方、コーパスの構築が予定より遅れている。したがって、総合的に研究の達成度を判断すると、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、次の項目に重点をおいて研究をすすめていく予定である。 1 チョーサーと同時代であるパストン家書簡集等をコーパスに取り込む。ただし、同時に多くのファクターを分析に取り込むため、コーパスの範囲を広げ過ぎないことが重要である。 2 時間体系と空間体系を相互に関連づけたデータベースを構築する。 3 歴史語用論の方法論が進展していくことが予想されるため、常に最新の情報に注意を払い、本研究の方法論に取り入れる。 4 ヤーツェック・フィシャック教授(アダム・ミツケビッチ大学(ポーランド))やそのほかの研究者から、研究をすすめるうえでのレビューを得る。 5 本研究の成果を国際学会等において発表し、学会誌等に投稿する。
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