2013 Fiscal Year Research-status Report
アカデミック・ライティングを指導する大学院生チューターの指導実践と意識の変化
Project/Area Number |
24520588
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 裕子 早稲田大学, オープン教育センター, 助教 (50434353)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐渡島 紗織 早稲田大学, 留学センター, 教授 (20350423)
ドイル 綾子 早稲田大学, オープン教育センター, 助手 (80595835)
坂本 麻裕子 早稲田大学, オープン教育センター, 助手 (40648317)
BOYD J・PATRICK 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 助教 (50449328)
大野 真澄 早稲田大学, オープン教育センター, 助手 (50704657)
冨永 敦子 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (60571958)
澤 正輝 早稲田大学, オープン教育センター, 助手 (30608930)
|
Keywords | ライティング・センター / 大学院生チューター / チューターの成長 / ライフストーリー / 省察 / 振り返りと共有 |
Research Abstract |
アカデミック・ライティングを指導する大学院生チューターの意識と指導実践の変化とその要因を質的に分析した。分析対象は以下のとおりである。(1)学期末の振り返り記録 7学期分(延べ109人分)、(2)退職するチューターによる「置き土産プレゼン」資料、6学期分(延べ29人分)、(3)卒業するチューターへのインタビュー(平均約50分)10人分、(4)現役チューターへのライフストーリー・インタビュー(平均約60分)5人分、(5)チューター自身による新人研修・チューター経験全体の振り返りと共有 2人分。 (1)(2)(3)の分析から、チューターがさまざまな姿勢や技能を学んでいたことが明らかになった。チューターは、より書き手に沿い、自立を促す対話をし、一緒に考える姿勢を学んでいた。的確な質問や診断、指導に優先順位をつけるなど指導力一般に通じる意識も芽生えていた。そして、指導経験の積み重ねから、対応できる書き手や文章が広がり、指導に幅や柔軟性も出てきたと自覚されていた。また、指導観の変容や他者との関係の認識の変容には、チューターたちがライティング指導を通して人としても磨かれている様子が表れていた。こうした成長は、研修と実践との往復、実践と研究との往復、書き手と支援者との往復、他チューターとの関係から重層的に起きていると語られていた。 (4)の分析から、ライティング教育を必ずしも専門としない大学院生チューターが、ライティングについて学び、指導に携わる経験は、チューター自身の文章観、教育観、研究観、自己意識、他者との関係にまで影響を与えていることが明らかになった。 (5)の分析から、チューターの成長やチュータリング観を明らかにするうえで、チューター史の振り返りと共有が有効であることが明らかになった。この結果から、研修における振り返りと共有の有効性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時には、24年度にチューターの意識の変容の質的分析、25年度にチューターの指導実践の変容の質的分析、26年度に指導実践の変容の量的分析を行う計画を立てていた。しかし、チューターの意識と指導実践の変容が分かちがたく結びついており、24年度の研究成果から、意識の変容の分析についてさらに深く分析する必要性が見えたため、25年度も引き続き、意識の変容の分析を多く行った。また、当初の計画では、指導実践の変容の分析として、セッション対話をコーディングにより量的に分析する方法を考えていたが、先行研究の検討を通して、チューターが自分自身の暗黙知や実践知を省察し、共有する環境づくりのあり方を検討することがより重要な課題であると考えた。そのため、25年度は、省察を促す研修や環境のあり方についての先行研究検討、チューター自身による省察の分析等を優先させた。そのため、当初の計画と比較すると一見遅れているが、研究の内容としては、当初の計画よりも進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、チューターの成長を支援するために、チューターの省察と暗黙知・実践知の共有を促進する環境づくり(研修を含む)のあり方を、ライティング・センター運営の実践を通して研究していく。具体的には、次の内容を実施する。 (1)チューター研修において、自身の指導実践や意識を省察し、他者と共有する場を設け、その効果を検討する。 (2)チューターの指導実践の分析(セッション対話分析)を行う際、第三者による分析と並行して、セッションを行ったチューター自身の振り返り・分析を行う。 (3)省察、暗黙知・実践知の共有を促進する環境づくりについての理論研究を継続し、ライティング・センターにおける環境づくりのあり方の方向性を探る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度未使用額20,650円が生じた理由は、セッション対話の文字起こしにかかる委託費が、当初の計画よりも安く済んだからである。これは、前年度と同様、発注先の業者を、それまでの業者よりも安価な業者に変更したこと、文字起こしにかける日数を十分に長期間確保したことにより、単価が安くおさえられたためである。 最終年度は、セッション対話の文字起こしにかかる委託費、セッション対話の分析にかかる謝金、書籍を含む必要な消耗品費、研究成果発表のための旅費に加え、チューターの省察と共有を促進する研修や環境を分析するためにかかる諸経費(文字起こし委託費、謝金、人件費等)に研究費を使用したい。
|
Research Products
(2 results)