2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520734
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
樋口 知志 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10198989)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 城柵 / 蝦夷 / 俘囚 / 征夷 / 東北古代史 |
Research Abstract |
本年度の研究実績としては、まず2点の論考がある。一つは、国士舘大学考古学会編『古代社会と地域間交流II―寺院・官衙・瓦からみた関東と東北―』(六一書房、2012年9月)に掲載された「律令国家形成期における陸奥国と関東との地域間交流―寺院・官衙の瓦に関する考古学の研究成果を手がかりに―」であり、多賀城創建前の7世紀中葉~8世紀前葉における関東から東北への移民や地域相互の交流の動向を探ったものであり、同時期の城柵造営の歴史的背景についてさまざまな論及をおこなった。 今一つは、『アルテス リベラレス(岩手大学人文社会科学部紀要)』第91号(2013年3月)に掲載された「弘仁二年の征夷と徳丹城の造営」である。こちらは、アテルイ降伏後の征夷終焉期の陸奥国北部における城柵造営の特質と歴史的意義を論じたもので、いわゆる徳政相論の前後の時期における対蝦夷政策の変遷について先行学説の問題点を指摘したうえで、私論を展開した。 初年度ゆえ、本来ならば本研究における第一の課題である初期城柵についての研究や城柵論の再検討などの仕事を進めたかったが、多忙であったためそれらについての研究成果の刊行はならなかった。次年度(25年度)の最重点課題としたい。 またフィールドワークを一度も実施できなかった点も反省される。同様に次年度以降に適宜実施したい。 なお本研究と直接の関連はないが、今年(2013年)夏か秋にミネルヴァ書房より拙著『阿弖流為―「夷俘」と号することなかるべし―』が刊行予定であり、現在初校ゲラの校正にとりかかっている。本研究で深化をこころみるところの城柵論に関する予察を含む、奈良~平安初期の東北史についての歴史叙述であり、本年度の研究成果の一端に数えることができると思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必ずしも研究計画書に記したとおりに研究成果が挙げられている訳ではないが、本研究に関連する単著論文2点を公刊できた。当初の計画とやや順序は違っているが、比較的順調に進展していると自己評価される。5年間の研究計画の全体にもまったく破綻は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の初年度達成度も、もちろん十分に満足がいくものではない。フィールドワークや文献(写本)調査など、基礎的な部分での調査・研究活動に不十分さがめだった感は否めない。公務や外部からの原稿執筆依頼、学外での活動などが増加したことによる多忙化がその一因であったが、次年度からは本来の研究計画に立ち戻り、各年度全体のスケジュールをふまえて十分計画的に調査・研究活動を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の予算残額の275796円は、主としてフィールドワークや文献調査などの活動をおこなえなかったことにより発生した。次年度ではそうした調査・研究活動を重要課題として位置づけ、次年度分の予算額と合わせて適切な予算執行に努力したい。
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Research Products
(3 results)