2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520734
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
樋口 知志 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10198989)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 城柵 / 奥六郡 / 元慶の乱 / 日本三代実録 / 藤原保則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず「古代接触領域としての奥六郡・平泉」と題する論考を『岩波講座日本歴史第20巻地域論』(岩波書店、2014年)に掲載した。主に奥六郡・平泉を中心とした8~12世紀の東北北部地域史の通史的叙述であるが、(イ)北上盆地の諸郡と城柵制支配との関係、(ロ)城柵と流通経済・水陸交通との結節、(ハ)10世紀における城柵制支配廃絶の様相と新たな支配体制への転換など、本研究と深く関連する論点を盛り込んだものとなっている。 また、「元慶の乱と『日本三代実録』」と題する論考を執筆、2015年刊行予定の『国史談話会雑誌』第55号に掲載予定である。これまでほとんどなされたことがなかった『三代実録』中の乱関係記事の史料批判を試みたものであり、とくに(1)元慶2年3月29日条と(2)同年8月4日条の2条文に焦点をあてた考察をおこなった。その結果、(イ)乱関係記事には、藤原保則を「良吏」、前出羽介良岑近を「酷吏」として対照的に捉える『三代実録』編纂段階における後時的な人物評価にもとづく顕著な脚色・潤色がなされていること、(ロ)乱当時、保則を中心とする現地官軍首脳と藤原基経を中心とする中央政府首脳との間には相当深刻な政策路線の対立があったが、それらを隠蔽するための様々な虚構が『三代実録』編者の手によって設えられていること、などを明らかにした。 さらに、まだ作業途上であるが、関係史料の写本調査に着手し、厳密な本文校訂のための諸作業を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定では、「第二・第三の課題について各1編ずつ研究成果をとりまとめる」としたが、第二の課題(=城柵の構造的・機能的変化の解明)については概括的ではあるが「古代接触領域としての奥六郡・平泉」で大局的展望を示し、第三の課題(=奥羽両国の政治史の再構成)については、年度中に発表が間に合わなかったが「元慶の乱と『日本三代実録』」がそれに該当する。ただし、当初計画では元慶の乱の研究は平成27年度におこなう予定で、諸般の事情より前倒しとなった。とはいえ、元慶の乱については、以降もあと2編ほどの論考を執筆することになると思われ、その課題は次年度に果たしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前項目にも記したが、平成27年度には元慶の乱の史実経過と史的意義を解明するための2編ほどの論考を執筆・刊行したい。また本年度にようやく開始した史料調査においても充実した成果を得たい。 最終年度の平成28年度には、これまで持ち越しにしてきた城柵制の成立に関する論考をまとめるとともに、9世紀奥羽政治史に関する論考を執筆し、さらに同年度内に5年間の研究成果全体についての報告書を刊行したい。
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Causes of Carryover |
年度内に史料調査に関わる出張が一度しかおこなえず、またフィールドワークが実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、主に史料調査・フィールドワークとその成果のとりまとめのために使用する。
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Research Products
(2 results)