2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520734
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
樋口 知志 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10198989)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 城柵 / 徳政相論 / 征夷の終焉 / 阿弖流為 / 坂上田村麻呂 / 六国史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、城柵論についての研究を進める一方で、平安初期の征夷終結をめぐる政治過程を解明することをめざす研究をもおこなった。具体的には、拙著『阿弖流為―夷俘と号すること莫かるべし―』(ミネルヴァ書房、2013年)における当該期の政治史叙述で明示することができなかった詳細な論証過程を中心とした考察を「阿弖流為の降伏と徳政相論」と題して執筆し、『アルテス リベラレス(岩手大学人文社会科学部紀要)』第99号に発表した。同論考では、『日本後紀』・『日本紀略』・『類聚国史』などの征夷・対蝦夷政策関係記事に厳密な史料批判を施し、史書編纂時点における編者による改変部分を明らかにしつつ、一連の政治過程の再構成を試みた。またその過程で、『続日本紀』と『日本後紀』との間で征夷・対蝦夷政策の取り上げ方や桓武天皇の描かれ方に大きな差異が存していたとみられることをも指摘した。さらに、志波城(岩手県盛岡市)の巨大な規模を根拠に、阿弖流為降伏後にも依然として積極的征夷路線が取られていたと解してきたこれまでの通説的見解が最早成立しがたいことを、同城の最新の考古学的知見や関連する文献史料の読み直しにもとづいて明らかにした。 なお、今年4月には拙編著の『前九年・後三年合戦と兵の時代(東北の古代史5)』(吉川弘文館、2017年)が刊行されたが、研究成果としては昨年度に属するものである。同書における私の執筆部分では、古代城柵の時代から安倍・清原氏の時代への変容過程や、安倍・清原両氏が前者の時代よりすでに東北の地に足跡を残していたことなどを一般読者向けにわかりやすく論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一定の質を備えた論考を1編執筆することができたものの、本研究の中核をなす古代東北城柵論そのものを問う研究を活字にして発表することができなかった。その原因は様々あるが、来年度に一年間研究期間の延長を認めていただいたので、しっかりと責務を果たしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長が認められた来年度には、城柵論についての論考を必ず脱稿する。また元慶の乱の史実経過に関する論考を現在執筆中であり、それら2編の論考を年度内に完成させ、総括の報告書を作成して、6年間におよぶ研究活動を締めくくりたい。
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Causes of Carryover |
学内校務の多忙や依頼原稿などにより、当初予定していた調査・研究のための出張がおこなえなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度前半に調査・研究のための出張をおこなう。また研究環境改善のためにパソコンや周辺機器の更新も検討している。年度後半には、報告書印刷・刊行の準備を速やかに進める。
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Research Products
(3 results)