2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520754
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐竹 昭 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00127656)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | たたら製鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記した,(1)松江藩領の鉄師田部家ほかに伝えられた近世前期の鉄山証文について総合的考察を行い成果を取りまとめることについて,昨年度まずは卜藏家を中心に論文としてまとめる作業を行い,本年度はその発表(昨年度研究発表欄に印刷中として掲載ずみ)に加えて,根拠となった文書群を新たに「研究成果報告書」に翻刻して紹介する作業を行った。 そこでは,卜藏家の史的性格を同じく松江藩の鉄方法式で鑪株を認められた鉄師である絲原家・櫻井家・田部家などと対比するかたちで論じている。すなわち上記3家が中世以来の古い由緒とは別に鉄山のほとんどを買得により,その性格が近世的・専業的鉄師とみられるのに対し,卜藏家は鉄山所持の由来が一部異なることから,村の有力者から鉄師への成長という側面を指摘している。本年度は,その論文の発表に加え,それを支える史料としての卜藏家文書を「研究成果報告書」に翻刻・印刷し紹介することができた。なお,製鉄に必要な木炭量と所持鉄山面積との対応関係や鉄山の配置図作成については,すでに昨年度において仁多郡鉄師別鉄山・腰林配置の略図を公表するなど関連作業は進展している(『奥出雲町文化的景観調査報告書』2013年)。 同じく,(2)隣接する幕領石見銀山領との対比のため,幕領飛騨の資料調査を行うとした計画については,24年度および25年度の実施状況報告書に記したように,東北の鉄生産地域との対比に変更している。本年度も岩手県庁所蔵の旧藩時代の山帳(藩有林)の調査と釜石地域の現地調査を行った。その結果,大橋高炉や橋野高炉など幕末の木炭高炉の立地について,周辺村々の御山の林相(山帳の分析から)との関係で再検討する余地があること,甲子村御山大松倉山に従来全く知られていない高炉計画の存在などが明らかになった。これについては,短報ながら先の「研究成果報告書」に解説と資料を紹介した。
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