2013 Fiscal Year Research-status Report
近世後期における藩財政像の再構築-藩有資産の構造と運用の研究-
Project/Area Number |
24520759
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
伊藤 昭弘 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 准教授 (20423494)
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Keywords | 近世史 / 藩政史 / 藩財政 / 藩札 / 大名金融 |
Research Abstract |
今年度は、1)松江藩の財政・資産状況と資産運用実態、2)佐賀藩における藩札の実態、3)佐賀藩と江戸商人の金融関係、の3点に絞った研究をすすめた。 1)では、嘉永2年のまず松江藩資産目録を分析し、松江藩と大坂商人との金融関係や、櫨蝋など領内産業への投資状況を分析し、松江藩は大坂商人との金融関係を持続しつつ、幕末には莫大な資産を蓄積し、その大半を領内の産業などに投資していたことを明らかにした。 2)では、幕末期に佐賀藩が発行した銀札を分析し、佐賀藩は藩札発行により大きな利益を得つつ、領内の経済状況を考慮した金融政策として発行額を調整したこと、領民たちは積極的に藩札を用い、主要な貨幣として利用されていたことを解明した。 3)では、江戸における有力商人だった鹿島清兵衛と佐賀藩の関係を分析し、佐賀藩は大坂商人との関係が悪化した時期において、鹿島からの借入などよって財政運営をすすめ、大坂商人との関係が正常化した後には鹿島との関係を見直し、債務返済を渋ったことを明らかにした。 以上については、いずれも論文として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、松江藩の資産蓄積と運用状況を解明したことにより、莫大な資産を持つ藩の事例を蓄積できたこと、さらに藩有資産の実態をより詳細に明らかにしたことにより、本研究の目的である藩有資産の構造と運用実態について、さらに研究を深めることができた。 また佐賀藩を事例に藩札・大名金融といった藩財政分析において欠かすことの出来ない問題についても検討したことにより、藩の財政運営の志向、特に資産の保持・拡大と債務整理や藩領経済政策との関係をより明らかにすることができた。 また、日本史研究会全国大会など学会における関係報告に参加し、現在の藩財政研究の水準を把握し、自らの研究にフィードバックさせた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる26年度は、1)明治政府・府県による旧藩資産の調査、2)松江・佐賀など諸藩の実態分析、をすすめる。 1)は、国立公文書館に伝存している「旧藩貸付金」に関する明治政府や各府県による調査や旧藩資産の処理にかんする資料を分析し、旧藩資産を全国的規模で把握する。 2)は、これまで分析をすすめてきた諸藩について、さらに資産・藩札・大名金融に関する研究を実施する。 以上及び25年度までの成果をもとに、藩有資産の構造と運用について総合的な見解をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
松江藩の資産運用に関する史料調査をさらに実施する予定だったが、現在収集した史料による論文執筆を優先したため、調査を次年度に繰り越して執筆論文をもとに史料を精査することにした。 松江藩の資産運用関係史料を調査するため、島根県立図書館に2回、国文学研究資料館(東京都)に1回の史料調査を実施する。
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Research Products
(3 results)