2014 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期における藩財政像の再構築-藩有資産の構造と運用の研究-
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24520759
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
伊藤 昭弘 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 准教授 (20423494)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近世史 / 経済史 / 藩政史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は国立公文書館が所蔵している旧大蔵省の「旧藩貸付金」に関する公文書を翻刻、分析した。明治期における旧藩の財政的問題としては藩債処分が有名だが、その一方で明治政府は、藩債処分の財源のひとつとして旧藩が蓄積していた資産、とりわけ農民・商人向けの債権を回収しようとした。実際の回収作業は各府県に委ねられたが、その方法や返済延期・減免願の取り扱いなどについて、各府県から旧大蔵省の負債掛・国債寮へと問合せが殺到していた。その記録を上記「旧藩貸付金」関係史料と呼ぶ。現在伝存している関係史料のうち、全てを目録化した。また約8割を翻刻し、佐賀大学地域学歴史文化研究センターのウェブサイト(http://www.chiikigaku.saga-u.ac.jp/)で公開している。 本史料の分析により、さまざまな藩が藩政期に農民・商人らへ融資していたことが判明する。ただあくまで府県からの問合せが主であるため、「旧藩貸付金」の全貌を明らかにするには、本研究で行った松江藩の研究の如く、各府県で作成された「旧藩貸付金」回収のための帳簿類を詳しく検討する必要がある。 本研究全体では、松江藩、松江藩、佐賀藩、萩藩などが保有した「資産」(現金、債権)の存在形態や、その運用実態を追求した。特に松江藩や松代藩については、保有資産の規模、運用の実態、融資対象、藩債との関係など、極めて細部まで判明する史料が伝存していたため、藩の「資産」に関するモデルケースとなり得るような分析を行うことができた。一方佐賀・萩藩は、「資産」の多くが藩主家の「家政」の枠内で管理され、廃藩後も継承されたとみられるため、関係史料が少ない。ただ「藩」に資産が残った前者、「藩主家」に残った後者との対比が可能となった。上記「旧藩貸付金」関係史料に登場する多くの藩で、この4藩のような状況にあった藩はまだあったと想定され、今後の史料発掘に務めたい。
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Remarks |
本研究により翻刻した「旧藩貸付金」関係公文書を公開している。
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Research Products
(2 results)