2012 Fiscal Year Research-status Report
19世紀中葉の欧米列強によるアジア戦略とそのネットワーク形成過程の解明
Project/Area Number |
24520843
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小暮 実徳 明治大学, 文学部, 講師 (90537416)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日蘭交渉史 / 幕末期オランダ対日外交政策 / 19世紀中葉の欧米列強のアジア進出 / 19世紀アジアにおける国際関係 / タウンゼント・ハリス |
Research Abstract |
本年度は、現在の科学研究費補助金(基盤研究C)の研究計画に密接に関連する先年度までの科学研究費補助金(若手研究A)の研究計画を終了させることに集中した。これは幕末期日本関係オランダ語史料集出版計画である。先年度までに、オランダ語テキストに関する、主に文法上の問題は、ほぼ解決していた。しかしその後、史料の専門家であるライデン大学人文学部スカリヒャー研究所ブイケルス教授から、史料上の踏み込んだ所見・指摘を受け、更に出版を意図したテキストの統一等の指導を受けた。そこで該当個所を、再度史料のオリジナルと照合・修正し、本文に英語で付加した導入や注のネイティブチェック後、最終稿として纏め、700ページにもなった原稿を同教授に提出した。ここで終えたはずであったが、ブイケルス教授は、この全最終稿にも目を通され、更に向上できる箇所の所見を行ってくれた。そこからその所見に従い、テキストを校訂した。この際生じた新たな諸問題は、オランダに再渡航し教授と直接解決した。この間更に同プロジェクトに関わる約150ページの原稿が見つかった。そこで、これを校訂し付加した。その後全体の統一をし、またインデックスを付け、最終原稿を完成させた。この史料集は、約900ページの三巻本となった。現在同教授と、出版につき検討している。 この史料出版計画に並んで、現在の直接的な研究計画『タウンゼント・ハリス個人文書』の史料翻刻作業も続けた。目下当初の計画の中心部分である約300ページの翻字が終了している。しかし今後この原稿は、アメリカ現地協力者の校閲を必要する。 この海外渡航期間、様々な現地研究者との交流が出来た。このようなことは、国際的研究者交流の点から大変望ましいことは言うまでもないが、自身の研究に関する最新の状況も認識でき、極めて意義深かった。このような実りある研究が続けられたことに、心から感謝致します。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に、史料の量が膨れ上がったことは、最初の計画立案が不十分であったとも言える。しかしながら開始した計画を、その状況に応じ、より十分な形で公表することは、出来る限り必要であろう。長期海外調査により、現地協力者の十分な便宜を得ることが出来、当初考えていた以上の質の向上が認められている。ここから、今年度の出版は叶わなかったにせよ。十分な成果を達成したと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
オランダ語史料集出版に関しては、ほぼ終了したと述べられる。しかしこの種の出版は、常に問題が生じる。何とか出版社を探して、この成果を公表することに努める。とにかく今後は、現在の直接の研究計画『タウンゼント・ハリス個人文書』に集中する。現在までに翻字したテキストを、アメリカ人現地協力者に校閲してもらい、テキストを完成させる。初代在日アメリカ総領事ハリスは、アジアにいる同郷人、また各国要人と、多くの書簡の交換をした。可能な限り、このハリスと文通した、重要な人物の文書も、アメリカ国立公文書館・議会図書館等で検討し、同研究計画をより深化させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、主に海外現地調査に関わる用件に支出される。この中では、現地史料調査・収集・分析、現地研究協力者との共同作業を実施する。具体的には、アメリカ合衆国における本プロジェクトに関わる作業である。今夏には、ニューヨーク・シティカレッジに訪問し、現地協力者ヴァン・ノルツ教授に、今まで翻字した『タウンゼント・ハリス書簡集』に含まれる「ハリスの手紙」の原稿の校閲を依頼し、その後問題個所を、同大学が保有する同史料のオリジナルと照合し解決する。冬も同作業を継続するが、可能であれば、ワシントンDCにあるアメリカ国立公文書館・議会図書館に訪問する。ここでは、ハリスと書簡を交換したアメリカ人の文書を収集・分析し、同史料をより多角的に検討する。
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