2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520844
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
蔵持 不三也 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40195540)
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Keywords | 頭蓋変形 / 民俗慣行 / 幼児 / ローカル・アイデンティティ / 伝統文化 / フランス農村 |
Research Abstract |
本年度は、国立民族学博物館(吹田市)で南米ペルーなどの頭蓋変形習俗関連資料の収集と変形頭蓋自体の調査を行ったほか、2013年12月にはパリ国立自然史博物館人類学研究所で新たに見つかった変形頭蓋の撮影・調査を実施した。また、形質人類学で一時代を築き、頭蓋変形の研究でも巨歩を記したBroca教授の文献を最大限集めることができた。現段階ではまだフランス各地で19世紀から20世紀中葉にかけてみられたこの「奇習」が、はたしていかなる意図や目的を明確に見定めることは難しいが、それでも以下の点についてはほぼ確信をもって言えるまでになった。 ①基本的に農村社会を中心とした慣行であること。②フランス語で「トゥールーズ型頭蓋」と呼ばれている変形頭蓋の慣行が、じつはトゥールーズに限らず、パリ周辺を含むフランス各地の幼児に施されたこと。③変形には地域的な特色がある程度みられること。④ペルーにおける伝統的な頭蓋変形と様式的一部類似していること。⑤一部の例外を除いて、この変形を受けた人物がそれを隠そうとする傾向にあったこと、など。 ただ、はたしてこの変形が何のために行われ、誰がそれを実際に行ったたかに関しては、なおも資料が不足している。おそらくローカル・アイデンティティと結びついた「伝統」を遵守し、助産師ないし民間医療者がその変形措置を担った可能性が大きいと思われるが、この基本的な疑問を今年度の現地調査で最終的に明らかにし、フランス民族学ないし文化人類学の分野では稀有なものとなるはずの報告書を作成・発表したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
医学や形質人類学の分野を除けば、先行研究がほとんどなく、おそらくはすでに消失した民俗慣行であるため、これまでに収集できた民族学・文化人類学の文献は想定していたより少ない。加えて、実際にこの変形を行った、あるいは受けたインフォーマントとコンタクトがとれない状況にある。フィールドワークとしてはなかなか厳しい状況といえる。また、データとしては所蔵されているはずの博物館を訪ねても、「現物」が散逸(?)ないし在所不明となっているケースがままある(たとえばトゥールーズ国立人類博物館)。
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Strategy for Future Research Activity |
本年9月に再び渡仏し、パリ国立古文書館や、まだ変形頭蓋の所蔵が確認できていない地方の人類学系博物館(レンヌ博物館、バスク博物館など)、さらにパリの民衆芸術伝統博物館を拡大・移転して昨年開館した、マルセイユの国立地中海博物館で実例調査を行うとともに、地方で刊行されている郷土誌や出版物にまでフィールドを広げ、基礎資料の収集を図る予定である。一方、困難かもしれないが、変形インフォーマントをさまざまなルートから探し出し、インタヴューなどの聞き取り調査も行いたい。むろん、医師や形質人類学者たちの先行論文(「パリ人類学会誌」など)のバックナンバーを悉皆的にチェックしなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フランスにおける専門知識提供者への謝礼を想定していたが、提供者が病気療養中だったため、出費ができなかった。 現在(2014年5月段階)で、同提供者が無事退院したので、9月の現地調査時に改めて専門知識の教示を求める。
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Research Products
(2 results)