2012 Fiscal Year Research-status Report
身体表現からみた弥生時代のジェンダー構造に関する実証的研究
Project/Area Number |
24520859
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
光本 順 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (30325071)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 考古学 / ジェンダー / クィア / 弥生時代 / 身体表現 |
Research Abstract |
本研究課題は、弥生時代の身体表現にかかわる複数種類の考古資料を分析対象とすること、ならびにそれら資料に関するジェンダー分析を実施することを特色とする。平成24年度は以下の研究を実施した。 1.分析資料と資料集成: 平成24年度の分析対象資料は、西日本弥生時代前期・中期の考古資料を中心とした。具体的には「人形製品」として分類する人形土製品と人面付土器、土製仮面、分銅形土製品、人形石製品、性的象徴資料(石棒他)を分析対象資料とした。それらについて資料集成を実施し、分析の基礎となる資料データベース作成作業を順次行った。 2.資料観察: 本研究の基礎として、以下の鹿児島県、山口県、大阪府、京都府、茨城県の資料について実見し、観察または実測・写真撮影による記録化を行った。 【人形土製品】山口県綾羅木郷台地遺跡、大阪府東奈良遺跡。【人面付土器】大阪府目垣遺跡、京都府温江遺跡、茨城県泉坂下遺跡。【分銅形土製品】山口県内の遺跡資料(明地遺跡ほか)。【人形石製品】鹿児島県山ノ口遺跡。【性的象徴資料(石棒他)】山口県綾羅木郷台地遺跡。 3.資料分析・考察: 集成および観察を行った資料を中心に、基礎的研究(資料に関する学史的研究、「人形製品」の器種分類の研究、分銅形土製品の系譜に関する型式学的研究)およびジェンダー研究(器種内・器種間関係の分析)を実施した。また資料に基づく分析・考察に加え、平成24年度は本研究課題の枠組に関する学史的・理論的研究(弥生時代のジェンダー研究および弥生社会論、欧米のクィア考古学に関連する研究等)も並行して実施した。こうした資料分析・考察にあたっては、考古学やクィア・スタディーズにかかわる関係学会における情報収集を実施した。これらの研究成果に関しては、次年度に発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度における分析対象資料(西日本弥生時代前期・中期の身体表現資料)の集成作業、資料観察、資料分析・考察がおおむね順調に進んでいるため。 資料に関しては、特に西日本弥生時代の人形土製品や人面付土器、分銅形土製品、人形石製品に関する研究を進めることができた。また、弥生社会論や当該期のジェンダー研究、欧米のクィア考古学に関する学史的・理論的研究に関しても計画通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、資料集成と資料観察という本研究課題の基礎となる部分をより強化する方向で検討することで、研究のいっそうの進展を図る。 本研究課題は、研究計画全体を通じて、弥生時代の身体表現にかかわる複数種類の考古資料を分析対象とすることを特色とする。そのため、関係機関の協力のもとに実施する資料観察においては、可能な限り複数種類の資料の観察を同時期に行うことで、研究全体の効率化・迅速化を図ることが可能となる。 平成24年度は、資料集成データベースの充実を図る観点から、西日本弥生時代前期・中期の身体表現について、これまで自身が積み重ねてきたデータベースを基礎としつつそれを補足する作業を実施した。次年度以降に関してはそうして得られた新たな成果に基づく資料観察についても、引き続き順次実施する。また、資料観察の効率化という点では、所蔵機関との調整のもとで、平成25年度対象資料のひとつである西日本の木偶などとあわせるかたちで実施することも検討する。同様に平成24年度対象資料に関する分析・考察、成果発表についても、資料観察の進捗にあわせて、当初予定の平成25年度計画分とともに実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料観察を実施するに際して必要となる、資料所蔵機関との連携を図るべく、次年度の研究と合わせた計画を立案することとした点が当該研究費の生じた主な状況である。次年度使用予定の研究費については、主として平成24年度分析対象資料に関する補足的な資料観察のために使用する計画である。
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