2012 Fiscal Year Research-status Report
近世日本国家領域境界域における物資流通の比較考古学的研究
Project/Area Number |
24520860
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
渡辺 芳郎 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (10210965)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 達人 弘前大学, 人文学部, 教授 (00241505)
池田 栄史 琉球大学, 法文学部, 教授 (40150627)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 近世国家領域境界域 / 物資流通 / 南北比較 / 陶磁器 |
Research Abstract |
平成24年度においては,当初の計画通り,鹿児島県三島(竹島・硫黄島・黒島)において踏査を実施した。実施期間は8月6日~13日の8日間である(竹島:8/6・7,硫黄島:8/7-9,黒島:8/9-13)。その結果,計64地点(竹島15,硫黄島23,黒島26)において,陶磁器を中心として計407点(竹島89,硫黄島153,黒島165)を採集した。その産地は中国・備前・肥前・鹿児島・沖縄などがあり,年代的には11~19世紀のものである。 12月14日~16日,沖縄の琉球大学において研究分担者2名(琉球大学・池田榮史,弘前大学・関根達人)とともに研究打合せを実施し,各分担者のそれまでの研究成果を報告した。内容は,関根「サハリン出土の日本系遺物」,渡辺「鹿児島県三島村踏査報告-南西諸島における中近世の陶磁器流通-」,池田「考古学からみた近世沖縄の物資流通(予察)」である。それらの報告を踏まえ,近世国家領域境界域における物資流通について,南方(鹿児島-沖縄-中国)と北方(東北-北海道-ロシア・中国)との比較検討について議論を行い,今後の研究の展開について打ちあわせた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鹿児島県三島(竹島・硫黄島・黒島)の踏査では,集落部において古代から近世までの多くの陶磁器を採集することができた。陶磁器の生産地は中国・備前・肥前・鹿児島・沖縄などであり,また年代は11世紀~19世紀と継続的に流通していたことが明らかになった。さらに九州経由でもたらされた陶磁器とともに,沖縄経由で入ってきたと思われる中国磁器も見られ,三島をめぐる多様な流通圏の存在が予想された。またこれまで古代~中世の陶磁器流通については先行する調査研究があったが,近世陶磁器についてはほとんどなかったので,三島における近世陶磁流通に関する基礎資料を蓄積することができことも,大きな成果となった。 琉球大学における研究打合せにおいては,南方と北方における近世国家領域境界域における物資流通状況の研究状況と課題が把握された。とくに沖縄における王府統制が実態としての物資流通に影響を与えていたかが注目され,それと北方地域における物資流通との実態比較が重要なテーマとして,認識を共有した。これまで個々の地域で進められてきた境界域の状況を比較し,共通認識の元に調査研究を進める契機として重要な成果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
沖縄における研究打合せの結果,次年度の研究の推進のため,以下の調査研究を実施することになった。 関根:松前藩の手工業生産とその製品などのアイヌ社会への流通。松前藩内において生産された手工業品など国内製品が,どの程度,どのようにアイヌ社会に流通し,それがどのように受け入れられたのかを,考古学資料から明らかにする。 池田:琉球王府の手工業生産と流通の管理体制から見た陶器流通。王府における陶器生産・流通に関する管理体制を念頭に置きつつ,その実態(管理からの逸脱・乖離を含め)を各島嶼における考古学資料から明らかにする。 渡辺:南西諸島における近世陶磁器の流通。基礎資料を欠く十島における踏査・採集資料を基にして,既存資料と比較検討することで,南西諸島における近世陶磁器流通の特質を明らかにする。 また今年度10月末に弘前大学にて研究打合せを実施し,それまでの調査研究成果を報告するとともに,最終年度に向けての計画を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:19万円 旅費: 十島踏査:130万円 研究打合せ(弘前大学):40万円
|