2013 Fiscal Year Research-status Report
土器胎土からみた混和を伴う縄文土器製作システムの研究
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24520863
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
河西 学 帝京大学, 文化財研究所, 講師 (60572948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 建速 東海大学, 文学部, 教授 (20408058)
中村 利廣 明治大学, 理工学部, 教授 (60062022)
今村 啓爾 帝京大学, 文学部, 教授 (70011765)
小林 謙一 中央大学, 文学部, 教授 (80303296)
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Keywords | 縄文土器 / 混和 / 阿玉台式 / 土器胎土 / 蛍光X線分析 / 薄片 / 岩石鉱物 |
Research Abstract |
2年目の成果は、①相模原市大日野原遺跡土器の蛍光X線分析による化学成分組成 ②栃木県桧の木遺跡土器の薄片による岩石鉱物組成および化学成分組成、③茨城県陸平貝塚土器の化学成分組成が明らかになったことである。概要は次の通りである。 ①前年度に岩石鉱物組成分析をした同一試料について蛍光X線分析を行ったもので、地元の他型式土器と比較して阿玉台式の化学組成が、Kが高めでMg、Mnが低めである特徴が認められた。しかし、Fe、Ti、Vが高濃度であることから阿玉台式土器が必ずしも花崗岩地帯で作られたものではない可能性が考えられた。 ②桧の木遺跡の化学組成からは、どの土器も安山岩~デイサイト質のSiの値を示し、地元地質との類似性が推定され、Fe、Tiが高濃度であることから、土器原料が狭義の花崗岩由来の可能性が低いことが推定された。岩石鉱物組成では、黒雲母が多い土器では含砂率と重鉱物の割合が高く花崗岩類が多い傾向があり、黒雲母が少ない阿玉台式では、含砂率と重鉱物割合が低く、変質火山岩類や堆積岩が多く含まれる傾向が認められ、在地の大木系土器、加曽利EI式などの胎土と共通性が認められた。これら変質火山岩類と堆積岩を伴う黒雲母が少ない阿玉台式土器は、岩石鉱物組成やK/Si値の検討などから地元地質と類似性が認められ、地元原料と雲母や花崗岩類の混和材を混和しで製作された阿玉台式土器である可能性が推定された。 ③陸平貝塚の化学組成では、阿玉台式も他型式土器も桧の木遺跡や大日野原遺跡に比べNIの含有率が高い特徴が認められ、胎土の地域性を示すものとと考えられる。 以上のように桧の木遺跡や陸平貝塚で阿玉台式の土器胎土に地域性が認められることから、地元原料を用い雲母などの特定混和材を混ぜた土器作りがなされていた可能性についての確からしさがより増大した。今後この推定を検証するための事例を増やす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的は、阿玉台式土器などの胎土の岩石鉱物組成・化学組成における地域差の有無を明らかにし、型式学的地域差の検討を踏まえ、雲母・花崗岩類などの混和を伴う土器製作システムの解明と土器の移動を明らかにすることである。そのためには、①地質的特徴を示す複数の典型的な遺跡を選択し、型式学的特徴を良好に保存している土器片を試料として分析し、試料ごとに岩石鉱物組成や化学組成を明らかにし、遺跡周辺地質との比較により個体ごとに土器の原料産地を推定する。その際、地元原料をもとに製作されたと考えられる別型式土器胎土との比較により、阿玉台式土器などでの原料混和の割合を推定すること、②遺跡ごとおよび時期ごとの土器胎土の特徴と地域性を面的に把握することにより、混和の実態、原料の移動の有無、土器の移動などを明らかにして、阿玉台式土器などの土器製作システムの特徴を他型式土器との比較によって解明すること、をあげた。 2年目の本年度は、相模原市大日野原遺跡土器の蛍光X線分析による化学成分組成、栃木県桧の木遺跡土器の薄片による岩石鉱物組成および化学成分組成、および茨城県陸平貝塚土器の化学成分組成を明らかにすることができた。複数の代表的遺跡の組成が明らかになったため比較検討が可能となり、胎土の地域性、土器の移動、混和の可能性が推定することができた。また茅野市長峰遺跡の阿玉台式土器においては、収蔵施設に出向き、ルーペを用いた肉眼観察によって岩石鉱物組成を得た。 データの解釈、学会発表、報告書作成などに重点をおいて取り組むことができた。平行して土器および比較のための筑波周辺の河川砂試料などの分析作業、顕微鏡による計数作業などを継続的に進めている。 新たな遺跡での分析試料の選択は、栃木県品川台遺跡試料の資料化がやや遅れ気味であるが最終年度において成果を得られる見通しである。 この状況からおおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
阿玉台式土器において、各地域での地元原料を用い雲母などの特定混和材を混和して土器作りがなされていた可能性が高くなったことから、さらにこの推定を検証するための事例をいくつか追加したい。具体的には品川台遺跡を現在準備している。品川台遺跡は、第四紀火山からなる那須火山帯の東に位置する。那須火山帯周辺の河川砂の特徴は、安山岩を主体とすることから、従来の分析した遺跡の地質的環境と明らかに異なるため土器胎土の地域的特徴を明らかにしやすい長所をもつことから重要な分析結果が期待される。 まだ分析途中である陸平貝塚や雲母・花崗岩類の原料産地候補である筑波山周辺河川砂の薄片による岩石鉱物組成分析は、継続的に進め完成させる予定である。 平成26年度は最終年度であることから、これらの研究データを合理的に解釈分析し、その成果を広く一般に公開するため、公開研究成果報告会の開催を11月29日(土)あるいは30日(日)に明治大学リバティータワーで予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
打ち合わせ会議の旅費があまりかからなかったこと、研究分担者の一部は複数の研究費のやりくりの中で当該研究における使用可能期間内での支出が少なかったことなどがあげられる。 物品費は、分析関係消耗品、書籍・関係資料収集、パソコン関係消耗品、公開の研究成果講演会試料の印刷代などに使用する予定である。旅費は、試料収集のための調査旅費、研究発表(日本文化財科学会奈良教育大学で開催)の旅費などを予定している。謝金は、土器試料の選択抽出、その後の資料作成などにおいて協力いただく研究協力者への謝礼、公開の研究成果講演会の準備に関わる謝礼などを予定している。
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Research Products
(4 results)