2013 Fiscal Year Research-status Report
欧州における地域的な環境革新システムの形成と環境技術の移転に関する研究
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24520893
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 潤 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (90284562)
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Keywords | 人文地理学 / 地域計画・地域政策 / 環境 / イノベーション |
Research Abstract |
24-25年度には、環境技術を生む地域的な革新システムの形成要因を明らかにすることを目的とした。この目的の一部を達成するため、25年度には、以下のような研究計画を立てた。まず予備調査で、平成24 年度に抽出した対象地域で実施する現地調査の調査項目を精査する。その際、地域的な革新システム形成に作用する以下の要因に留意する。すなわち①要素条件、②需要条件、③関連・支援企業、④戦略と競争関係、⑤企業の空間的な近接性、⑥企業の多様性である。このような形成要因に関する調査に加えて、現地調査では、次年度につなげるため、環境技術の海外移転の程度に関しても対象自治体で調査する。最後に、現地調査の結果を踏まえて、重回帰分析等を用いて、環境技術の地域的な革新システムの形成要因を明らかにし、結果を学会・専門雑誌等で公表する。 上述した研究計画にそって調査をすすめた結果、予備調査で、主に専門性の高い企業の空間的な近接性と企業の多様性に関連する調査項目を抽出した。この予備調査の結果をもとに、平成25年8月20日から9月12日に、調査地であるスウェーデンのストックホルム、ヨーテボリ、イギリスのケンブリッジ、ロンドンで環境産業・クラスター関係政策の担当官やこれらを対象とする研究者に対して対面調査を実施するとともに、関連資料を収集した。最後に調査後の分析では、重回帰分析を用いて、スウェーデン・イギリスにおける環境産業の集積と環境産業の近接性ならびに多様性の関係を検討した。分析の結果、スウェーデン・イギリスにおける環境産業の集積が大都市を志向することと、スウェーデンにおいては当該産業の多様性ではなく、専門性によって環境産業の集積がもたらされていることを明らかにした。この研究結果の一部を国際・国内学会で報告する一方で、学術論文で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査や現地調査を通じて、分析に必要な資料を収集できたことと、これらの資料を用いた調査後の分析で、環境産業の集積と環境産業の特性の関係を明らかにし、結果として、環境産業の集積・クラスター形成に関して、従来の研究で見出されていた知見の一部を本研究も再確認できたことが評価理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、25年度には収集した資料をもとに、環境産業の集積の実態と集積をもたらす要因の一部を明らかにした。次年度では、研究計画書にしたがい、主に環境技術の海外移転に関する研究を進める。まずは25年度までに収集した資料を参照しつつ、現地調査の調査項目を再検討する。その際、環境産業の立地やこれらの産業による技術移転に関する国家戦略や法制度等の制度に留意する。これらの調査項目にもとづく現地調査を通じて、環境技術の海外移転の特徴を明らかにしたい。
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