2012 Fiscal Year Research-status Report
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24530040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
木下 智史 関西大学, 法務研究科, 教授 (40183793)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 違憲審査制 / アメリカ合衆国 / 最高裁判所 |
Research Abstract |
研究課題「違憲審査基準論の比較法的再検討」を進めるため、2つのアプローチを行った。 第一は、アメリカ合衆国最高裁裁判官スティーブン・ブライヤーの著書『Making Our Democracy Work: A Judge's View』(Knopf, 2010)の集団的翻訳作業である。同書は、現役の合衆国最高裁裁判官が市民向けに民主制における最高裁判所の機能について論じたものであるが、合衆国の歴史のなかで最高裁の違憲審査が果たした役割を、具体的な事例を素材としつつ検討したもので、単なる制度紹介にとどまらず、民主主義と違憲審査制との相互補完関係という新しい視点を打ち出している。訳文を集団的に検討する過程で、著者の主張や具体的判決内容の検討も行い、個々の違憲審査基準の現実の裁判における機能の理解を深めることができた。 第二は、研究代表者と連携研究者にゲスト・スピーカーを加えた研究会を4回開催し、表現の自由の内容規制、戦時下における人権保障、ウォーレン・コート期における違憲審査基準論の展開、信教の自由と政教分離の関係、医療保険法の合憲性をめぐる最高裁判決、現在のロバーツ・コートをめぐる状況など、合衆国の最新の判例動向を多角的に検討しつつ、日本における違憲審査基準論の歴史的役割や問題点を深く掘り下げた。そして、合衆国における違憲審査基準論の機能について、正確な理解を得るため、カリフォルニア大学アーバイン校ロースクールのアーウィン・チェムリンスキー教授を訪ね、最近の合衆国最高裁の動向、人民主義的憲法観の隆盛をはじめとする合衆国の憲法学の動向、表現の自由の厳格審査基準の実際の適用方法について、インタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の一つの柱であるスティーブン・ブライヤー著『Making Democracy Work: A Judge's View』の翻訳作業は、すべての訳文の作成と検討を終え、出版社に入校できる状態にある。 研究会に参加したゲスト・スピーカーの研究報告やチェムリンスキー教授へのインタビューを通じて、合衆国最高裁の違憲審査制運用について、多くの知見を得られた。これを踏まえて、研究代表者、連携研究者はそれぞれ研究テーマを固めつつあり、それを研究論文にまとめていく作業を進めつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果の一つ、スティーブン・ブライヤー著『Making Democracy Work: A Judge's View』の翻訳書の出版を行うにあたり、同書の解題を作成し、その位置づけ、意義について検討する。 違憲審査基準論の検討については、Yale大学ロースクール、アキール・アマー教授らへのインタビューを通じ、合衆国における違憲審査基準論の歴史的形成過程についての検証を行う。同時に、研究代表者、連携研究者において、各自の研究テーマを発展させて、公表論文作成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度未執行分(3580円)と平成25年度交付額とを合わせて執行する。 内訳は、本研究の消耗品費として、日本およびアメリカの違憲審査基準論に関する書籍の購入、2回開催予定の研究会に,研究代表者・連携研究者が参加するための国内旅費、研究会に招くゲスト・スピーカーの旅費(1回当たり1名分)、アメリカの憲法研究者へのインタビューのための外国出張費である。その他、ゲスト・スピーカーおよびインタビューを行うアメリカ憲法研究者への謝礼と資料整理への報酬を予定している。
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Research Products
(3 results)