2013 Fiscal Year Research-status Report
多様化する保険募集形態と実効的な情報提供規制のあり方
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24530086
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 道生 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60334950)
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Keywords | 無催告失効条項 / 継続保険料 / 保険契約者の認定 / 保険契約者の本人確認 |
Research Abstract |
本年度、とくに注力した課題は、保険約款の不当条項規制の観点から、保険契約における保険契約者への(保険募集時以降をも含む)情報提供のあり方について考察することであった。具体的には、生命保険契約における継続保険料の不払いの効果について規定する無催告失効条項につき、消費者契約法10条を適用しこれを無効とした東京高判平成21・9・30金判1327号10頁、その上告審判決である最判平成24・3・16民集66巻5号2216頁等を素材に、消費者契約法の不当条項規制に関連して、上記最高裁判決の判断枠組みによれば、無催告失効条項の有効性はどのような要件のもとに認められるのかについて、従来より保険契約者保護を重視した規律を保険契約法に設けている立法例であるドイツ法における状況も参考にしながら検討を行った(論文公表は、平成26年度の予定)。 また、本年度は、保険募集規制にも関わりのある判例評釈として、東京高判平成24・11・14判時2171号48頁を対象に、「保険契約者の認定」保険事例研究会レポート276号1頁(平成26年2月)を公表した。この事件は、簡易生命保険契約の保険契約者の認定が主要な争点となった事例であり、その事実関係によれば、保険契約の申込手続きを行い、契約申込時あるいは契約成立後も保険料の払込みを行ってきた者と保険契約申込書、保険証書に記載された保険契約者名義とが異なっており、申込手続きや保険料の払込みを行った者と保険契約申込書等における保険契約者名義人のいずれが保険契約者の地位にあるか紛争が生じることとなった。本評釈では、保険実務上、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」や金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」により、保険契約締結の際などに、保険契約者の本人確認が求められていることにも言及しつつ、保険契約者の認定は、申込書等の保険契約者名義を基準に判断すべきであるとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度当初の予定によれば、生命保険契約分野における情報提供規制に関し、「生命保険分野における募集の際の情報提供義務」(仮題)という論文の公表に年度内に目途をつける予定であったが、関連する法律改正等の動向を踏まえる必要があり、それがかなわなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度前半中に、生命保険契約分野における情報提供規制に関し、「生命保険分野における募集の際の情報提供義務」(仮題)という論文の年度内の完成に向けて目途をつける。その際には、論文に関連する保険業法や金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」などの改正動向、民法(債権関係)の改正に係る法制審議会の審議状況等にも留意する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、運営費交付金の増額、及び、海外渡航をしなかったため、当初計画の予定よりも旅費がかからなかったことによる。 平成26年度は、前年度以上の金額を旅費(国内外)および図書購入費用に充てる予定である。
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