2014 Fiscal Year Research-status Report
多様化する保険募集形態と実効的な情報提供規制のあり方
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24530086
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 道生 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60334950)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保険料不払 / 消費者契約法 / 保険約款 / 約款の内容規制 / 保険契約の失効 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究実績としては、『商事法の新しい礎石 落合誠一先生古稀記念』(有斐閣、2014)に所収された論文「生命保険契約における継続保険料不払の効果のあり方─無催告失効条項の有効性をめぐる議論を機縁として」(675-705頁)を挙げることができる。 生命保険契約の約款上、継続保険料(第2回目以後の保険料)の不払いの効果については無催告失効条項が規律するところであったが、近時、同条項に消費者契約法10条を適用しこれを無効と判断した裁判例(東京高判平成21・9・30金判1327号10頁)が現れ、この条項の内容的合理性に関し、理論面のみならず、実務上も大きな関心を呼ぶところとなった。この問題について最判平成24・3・16民集66巻5号2216頁は、一定の要件のもとで無催告失効条項の有効性を認めるとの判断を示したうえで、結論として原審判決(前掲東京高判平成21・9・30)を破棄し、その要件を備えているかを審理させるべく事件を原審に差戻した。引き続いて、その差戻審判決では、上記最高裁の示した判断枠組みに即して事実認定を行い、要件の充足を認めて無催告失効条項の消費者契約法10条該当性を否定した(平成24・10・25金判1404号16頁)。論文では、まず、消費者契約法10条における不当条項規制に関して、上記の最高裁判決の判断枠組みによれば、無催告失効条項の有効性はどのような要件のもとに認められるのか、学説や差戻審判決を含むその後の裁判例を参照し、その具体的内容を明らかにした。以上を踏まえ、さらに、生命保険契約における継続保険料不払いの効果のあり方に関し、現行の約款規定、実務運用に代替しうるより適切な規定のしかたは考えられないのかを考察した。その際、継続保険料の不払いの効果について、保険契約者保護を重視した規律を保険契約法上設けているドイツ法の状況も参考にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度には、保険募集規制について保険業法の重要な改正があったが、それを受けた施行細則(保険業法施行規則等)、金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正状況は、年度末になっても確定せず、業法改正後の規制の全体像の把握が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、保険募集規制について保険業法の重要な改正があったが、それを受けた施行細則(保険業法施行規則等)、金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正状況は、年度末になっても確定せず、業法改正後の規制の全体像の把握が遅れている。平成27年度は、業法改正後の新しい規制について検討し、それを研究成果として公表する予定であるが、27年度が補助事業期間の最終年度であることから、同期間の延長も選択肢のひとつと考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、運営費交付金の増額、及び、海外渡航をしなかったため、当初計画の予定よりも旅費がかからなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、前年度以上の金額を旅費(国内外)、及び、論文作成費用等に充てる予定である。
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