2015 Fiscal Year Research-status Report
多様化する保険募集形態と実効的な情報提供規制のあり方
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24530086
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 道生 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60334950)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保険業法 / 保険募集 / 保険募集規制 / 情報提供義務 / 助言義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の主な成果として、小林道生「生命保険を利用した資産運用と募集時の情報提供義務 ―貯蓄性商品を対象として―」静岡大学法政研究20巻3号291-338頁(2016)を公表した。 保険募集における保険募集人あるいは保険者の情報提供義務のあり方、民事責任の成否については、従来より、学説上、主として損害保険分野を対象に関心が向けられてきた。他方、生命保険分野に関していえば、変額保険に関する判例を対象とする研究を除けば、学説における議論は幾分低調であった感は否めない。すなわち、生命保険分野では、これまでのところ、保険の保障内容が説明の対象となるような判決例の積み重ねが十分でなく、さらに、保障内容が説明対象であれば、損害保険と同一の枠組みのなかで併せて検討することも可能であるため、個々の判例研究を除けば、独自に議論されることがなかった。 もっとも、変額保険等の市場リスクを伴う投資性保険以外の貯蓄性を持つ生命保険についても、その資産運用的側面に関わって保険者側の情報提供義務が問題になることがあり、また、現時点で、必ずしも多いとはいえないものの、判例集登載の一定数の公表裁判例が存在することから、個別事例の検討の域を超えて、保険者側の情報提供義務に関する準則について一般化して議論する環境も整いつつある。 そこで、この論文では、投資性保険以外の貯蓄性を持つ生命保険を対象に、従来あまり議論されることのなかった、その資産運用的側面に関わる情報提供義務の諸論点について、最近の裁判例を素材に考察することにした。とりわけ、助言義務の問題に関し、書面を用いた定型的な説明義務と区別したうえで、それがいかなる場合に、どのような内容で存在するのかについて、関連する保険監督法上の規制の改正状況を踏まえつつ、検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
保険募集規制については、保険業法の平成26年改正により、本研究課題の検討にあたって、きわめて重要な意義をもつ見直しが行われた。この保険業法改正について、保険業法施行規則等の詳細を含む内容が明らかになったのは、平成27年度中であり、今後、同改正を対象とする研究を進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
保険募集規制については、保険業法の平成26年改正により、本研究課題の検討にあたって、きわめて重要な意義をもつ見直しが行われた。新設された情報提供義務、顧客の意向の把握義務等について研究を進めていく必要がある。とくに、平成28年に入ってから現在(平成28年5月)までの数か月の間、同改正に関わる重要な著書や論文が相次いで公刊、公表されており、これらを踏まえて研究成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、海外渡航をしなかったため、当初計画の予定よりも必要経費がかからなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、海外渡航(ドイツ)を計画しているほか、補助事業期間の最終年度であることから、本課題にかかる研究の総括的な位置づけとなる論文を作成・公表するための経費等に充てる予定である。
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