2013 Fiscal Year Research-status Report
昭和の大合併と平成の大合併の政治過程に関する総合的研究
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24530157
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
市川 喜崇 同志社大学, 法学部, 教授 (60250966)
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Keywords | 昭和の大合併 / 町村合併促進法 / 新市町村建設促進法 / 全国町村会 / 全国町村議会議長会 / 市町村合併 / 自治庁 / 地方六団体 |
Research Abstract |
本研究は、昭和の大合併と平成の大合併の政治過程を対象としている。第2年度目の平成25年度は、前年度に読み込んだ資料に基づき、昭和の大合併の政治過程の執筆に当たった。 本研究における昭和の大合併の政治過程の分析は2つの目的をもつ。1つは、通説である河中二講「議員立法形成の行政学的考察」『自治研究』32巻1号(1956年)の見解、すなわち、自治庁が合併の「当事者」であった全国町村会や全国町村議会議長会などの運動を「利用」したとする認識を打破することである。もう1つは、従来の研究の多くが昭和の大合併の最盛期にばかり焦点を当てているのに対して、初期や後期をも視野に収めて総合的な評価を下すことである。 各都道府県で編纂された町村合併誌や自治省行政局の編集による資料集『町村合併促進新市町村建設促進関係資料(全3巻)』(1962年)、あるいは『自治研究』、『地方自治』、『自治時報』、『都市問題』などの雑誌に掲載された、当時の学者、自治官僚、自治体職員等による論文などに当たることによって、従来の研究のなかで手薄な部分であった初期や後期について、豊富な認識を得ることができ、また、そうした作業を通じて、河中の通説を打破する見通しもついている。 その意味で、研究目的は順調に達成しつつあるといえるが、後に述べるように、この部分が従来の研究で手薄の部分であったこともあり、執筆に予想外の時間を要し、作業としてはやや遅れ気味である。研究計画の見直しを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」最大の要因は、昭和の大合併の政治過程の執筆に予想外の時間を費やす見通しとなり、作業が平成26年度にずれ込むことが確実となったことである。 現在、昭和の大合併の政治過程について原稿を執筆しているが、初期の記述は完了し、中期の半ばにまで差し掛かっている。初期は、町村合併促進法の制定前の時期であり、政府による積極的合併促進策の展開に先立って、各都道府県による、それぞれ対応を異にした独自の動きが見られる。この動きをていねいに拾い上げることは、筆者が批判する河中二講「議員立法形成の行政学的考察」『自治研究』32巻1号(1956年)による通説を打ち破るうえで重要である。また、都道府県の動きをすべて取り上げることは不可能であるにしても、当時の多様性を明らかにするためには、一定の類型化のうえに複数パターンの叙述をする必要がある。この作業に予想外の時間を費やした。 中期の核心は町村合併促進法の制定と改正の過程である。現在この部分の執筆を進めているが、全国町村会と全国町村議会議長会のロビイングによって制定された議員立法という側面、議員立法ではあるが実質的に当時の自治庁が深く関与したという側面、地方六団体が大筋では合併促進で一致しながらも内部に立場の違いがありそれが法案審議に反映されたという側面などを叙述している。こうした特色をある程度ていねいに描く必要があり、この点も、当初の予想以上に時間を費やしている要因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、昭和の大合併の中期の部分を執筆している。町村合併促進法の制定過程については、ほぼ叙述を完了した。今後は、その後の改正過程の叙述へと進む。この時期の合併の実態についてはこれまでの研究の中で比較的よく取り上げられているので、叙述は最小限にとどめる。 ついで後期の叙述に進む。新市町村建設促進法の制定過程と、その下での市町村合併の実態が叙述の中核となる。これまでの研究のなかで取り上げられることが少なかった時期であり、ていねいな叙述が必要である。新市町村建設促進法に盛り込まれた内閣総理大臣による合併勧告権の行使の実態把握と、その効力の評価がここでの焦点となる。これについては、各都道府県の町村合併誌や、『町村合併促進新市町村建設促進関係資料(全3巻)』(自治省行政局、1962年)の第3巻に掲載されている全国データを解析することで可能になると思われる。解析についてはすでに見通しがついている。 後期の叙述が終わった後に、昭和の大合併についての総括的な評価をする。 当初の研究計画では、昭和の大合併の研究の終了後、引き続き平成の大合併の研究に進む予定であった。しかし、上記のように、昭和の大合併の政治過程の叙述に予想外の時間を要し、現在のところ、平成26年度中に平成の大合併の本格的な叙述に進むだけの時間を確保できそうにない。初期から後期までを捉えた昭和の大合併の総合的な研究というだけでも、従来の中期に偏った昭和の大合併研究と比べて十分に意義があるものと考える。 そこで、平成の大合併については、当初の研究計画と異なり、本格的な叙述はせず、研究の結びの部分で、昭和の大合併との比較という観点から限定的にのみ取り上げることとしたい。先に述べたとおり、昭和の大合併についてのバランスのとれた総合的な認識を獲得するだけでも、従来の研究になかったことであり、十分な研究上の意義を確保できるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画どおり執行した結果、304円の執行残が生じた。 平成26年度の研究計画に基づいて執行する。
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