2012 Fiscal Year Research-status Report
米国パブリック・ディプロマシーにおけるフィランソロピーと政府の連携に関する研究
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24530188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
野口 和美 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (70552925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 治 横浜国立大学, 国際社会科学府, 教授 (10241738)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 米国 / フィランソロピー / パブリック・ディプロマシー / 開発途上国 / 市民社会 |
Research Abstract |
平成24年度の前半は、研究代表者および分担者は、パブリック・ディプロマシーの定義ならびにパブリック・ディプロマシーにおける財団などの非国家主体の役割について文献整理を行った。パブリック・ディプロマシーは、Nicholas Cullによると、以下の6つの定義となる。パブリック・ディプロマシーは、(1)交流外交、(2)対象理解、(3)アドボカシー(4)文化交流(5)、国際放送(6)心理戦に分かれている。今年度は、交流外交について焦点を置き、本研究の時代区分の一つ目であるI期(占領期)の日本における国際交流の発展過程のロックフェラー財団の役割、更に、財団と国務省との連携について、資料調査並びに資料整理を行った。特に、占領期におけるロックフェラー財団の役割において、当時の財団国際交流部長や同理事長のJohn D. Rockefeller 3rdが国際交流の発展において、大きな役割を果たしていたことが明らかになった。 また、パブリック・ディプロマシーは多様化しており、ヘルス・ディプロマシーやスポーツ・ディプロマシー等様々な分野に広がっている。その中で、比較研究として、ヘルス・ディプロマシーの占領期のロックフェラー財団の役割と米国政府との連携について調査、資料の整理並びに戦後、占領期史研究会において口頭発表を行った。 南カリフォルニア大学パブリック・ディプロマシー・センターの研究者を訪問した際に米国のアフリカにおけるヘルス・ディプロマシーであるPEPFAR(米国大統領緊急エイズ撲滅プロジェクト)のフィランソロピーの役割について意見交換を行ったが、今後、更に、研究を進める予定である。 研究分担者の小池は、比較研究として、アフリカにおける行政能力開発における日本の役割について国際開発学会で口頭発表を行い、日本のエイド・ディプロマシーについて研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に米国のパブリック・ディプロマシー(以下PDとする)やヘルス・ディプロマシー、その中でのフィランソロピーの役割についての文献調査を行ったが、多くの文献は、PDにおける政府の役割に焦点を当てていることが明らかになり、引き続き、フィランソロピーの役割や財団と政府との連携について調査を深めるべきであると考える。 I期(占領期)における日本の国際交流発展の米国のフィランソロピーの役割については、当時の財団国際交流部長のCharles B. Fahsの役割が大きく、米国国務省と連携し、国際文化会館の設立に貢献したことが明らかになった。更に、同理事長のJohn D. Rockefeller 3rdと国務長官のJohn Foster Dullesとの個人的なつながりが、国際交流の発展に影響力を与えていたことが明らかになった。最近の日米の交流外交について、平成24年9月に米国のシンクタンクならびに運営財団である「マンスフィールド財団主催の現代日本ビジョンの構築」に参加し、昨今のトモダチプロジェクトの現状や人的交流などについて財団所長と意見交換を行い、現在の日米交流における運営財団の役割が明らかになった。昨今では、本研究計画においてクラスター3として分類している運営財団と企業との連携が深くなっていることも明らかになった。 比較研究として、ヘルス・ディプロマシーに研究範囲を広げ、南カリフォルニア大学のNicholas Cull教授と米国大統領緊急エイズ撲滅プロジェクトのフィランソロピーの役割について意見交換を行った。様々な国々の大学院生と各国のPDについて意見交換を行い、日本のPDについても発表する機会を頂戴した。上述のように、平成24年度の研究計画に沿って、順調に研究調査を行っているが、今後は、PDも多様化しているので、新たな視点を含め、占領期以降のPDに焦点を当てたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、海外研究協力者の日米友好基金所長のPaige Cottingham-Streaterの協力を得て、パブリック・ディプロマシー(以下PD)における非政府セクター、特に、フィランソロピーの役割を更に明らかにするために、どのような分野に米国のフィランソロピーが助成しているのか、資料やデータ等を基に分析する。同年9月に、日米友好基金や財団調査センターにて、どの分野に米国のフィランソロピーが支援をしているのかについて、文献並びにデータを収集する。その際に、PDの官民連携について国務省職員やゲーツ財団職員からインタビューを行う予定である。 平成24年度に行った研究調査の結果を基に、日本の国際交流発展における米国のフィランソロピーというテーマで、米国NPO学会ならびに国際NPO学会において分担者と共同発表を行う予定である。 平成24年度にはI期(占領期)における国際交流の発展について調査を実施したが、平成25年度は占領期以降に焦点をあて、研究調査を進め、PDが多様化しているため、研究範囲を広げ、健康食育や感染症撲滅などを基にしたヘルス・ディプロマシー、国際協力援助を基にしたエイド・ディプロマシーも研究対象に含め、研究調査を深める予定である。米国のアフリカへの米国大統領エイズ緊急撲滅プロジェクトにおけるフィランソロピーの役割、特に、Melinda and Gill Gate FoundationとSusan B. Komen for the Cureというフィランソロピーの役割について調査研究を実施する予定であり、平成26年度に、この調査結果を基に研究代表者と分担者が国内外の学会での口頭発表や論文発表を行うことを計画している。世界で唯一のPDの研究所である米国の南カリフォルニア大学PDセンターを訪問し、PDの現状や新たな視点について意見交換を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、研究代表者に70万円、分担者に40万円を配分する。研究代表者と分担者、協力者は、平成25年度の国内外での共同発表に関する打ち合わせや今後の研究方針について神戸または横浜で打ち合わせを行うので、国内旅費が必要である。外国旅費として、パブリック・ディプロマシー(以下PDとする)を含めた公共政策におけるフィランソロピーの役割に関する研究の現況を把握するために、コネチカット州ハートフォードで開催される米国NPO学会(研究代表者並びに分担者)に参加する予定であるので、米国への旅費が必要である。平成24年度の研究成果について、日本の国際交流発展における米国のフィランソロピーというテーマで、当学会で発表する予定で、現在発表申請中である。 また、研究代表者は、平成25年9月に、海外研究協力者であるPaige Cottingham-Streaterが所長を務めている日米友好基金や財団調査センターにて、どの分野に米国のフィランソロピーが支援をしているのかについて、文献並びにデータを収集するために、米国(ワシントンDC)への旅費が必要である。その際に、日米交流について国務省職員、米国大統領緊急エイズ撲滅プロジェクトについては、ゲーツ財団職員からインタビューを行う予定である。PDの現況やPDにおけるフィランソロピーの役割や政府や企業との連携を調査するために、更には、ヘルス・ディプロマシー、エイド・ディプロマシーなどのPDやフィランソロピー、ガバナンス関連の書籍を30冊ほど購入予定である。
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Research Products
(5 results)