2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530230
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐伯 親良 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70136589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ホセイン モハメド シャリフ 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30588596)
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Keywords | 日銀短観 / ロジステック BSI / Dynamic Factor Model / 所得分布関数 / 消費動向調査 / 所得分配調査 |
Research Abstract |
1990年以降の 20年間にわたる「経済変動が個人間所得分布に及ぼした影響」を分析するために,この間の経済変動を分析した.本研究では景気変動を質的データに基づいて把握することを目的としていることから前年に蓄積した「日銀短観」のデータを利用し,新たな方法として日銀DIに替わる Logistic Business Survey Index(LBSI)を提唱した.この方法で得られる指数は内閣府が公表している Composit Index よりも景気実感により近いものとなっていることを実証した.また,この新たな指数は日銀DIよりも景気の振幅をより明確に描くことが示された.この研究成果の一部は大分大学で開催された九州経済学会((2013年12月)で報告し,また,「ビジネスサーベイデータによる景気指標」経済学研究,第80巻,第5・6合併号,2014年3月に発表した.また,カルマンフィルターによる景気指標の分析については,「消費動向調査」のデータ整備を終え,消費者意識指標の新たな推定をおこなっている. 所得分布の20年間の推移については,前年度に開発した所得分布関数の推定方法である最尤推定法,一般化モーメント法を用いて推定し,不平等度指数の比較をおこなった.これらは「消費動向調査」「所得再分配調査」のデータに基づいて分析をすすめた.これらの推定結果は9月に開催された Nigerian Economic Society の年次総会で報告した.MaxEnt による分析を進めるためにリサンプリングの方法について検討をおこなった.これらによりPC上で特定の分布関数からのランダムサンプルをとり出すことができるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,所得分布関数については最尤推定法,GMM法による推定法をより進展させることを目的としていたが,新規に導入したPCでより快適に最適化演算を進めることができるようになっている(PCワークステーションの導入).具体的には,「消費動向調査」,「所得再分配調査」,「家計調査」で推定を進めることができた.また,前年度作成した「賃金センサス」の推定作業の一部を残してはいるが研究目的達成のための準備を順調に進めている. 2,経済変動に関しては,日銀短観のサーベイデータを基に20年間の景気動向についての分析指標を作成した.この指標は景気実感に基づいており,生産にウエイトのかかったコンポジットインデックスよりも景気と所得分配の関係を分析するのに適していると判断している. 3,経済変動に関してさらなる質的データの利用を計るために「消費動向調査」のデータ整備を進めた(データ入力補助).また,このための分析プログラムも作成した.これにより日銀データに加えてより広範に質的データによる景気実感の分析が可能となっている 4,MaxEnt による分布関数の推定については若干おくれ気味ではあるが,ようやく,特定の所得分布関数からのランダムサンプルを抽出するテストを終え,ある程度自由に仮想的な状態での所得分布を作り出すことができるようになっている.これにより,シミュレーション分析に基づく実験をおこなうことができると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
20年間の所得分布の時系列的変動を「家計調査」,「賃金センサス」,「所得再分配調」に基づき分布関数を最終的に推定,代表的な不平等度指標を時系列的に推定,比較する. これにより所得分布,賃金分布がどのように推移してきたかを明らかにする.研究目的に掲げた MaxEnt による所得分布関数の推定をおこなうために,代表的な分布関数を特定化しシミュレーション分析による推定を試みる.これによりこの方法がどの程度有効であるかを検討する. 1990年代以降の経済変動について景気実感をもとに分析をさらに進める.追加的に「消費動向調査」に基づいて景況感,暮らし向きなどの判断項目に内在する共通変動要因を抽出する.ついで,最終的にカルマンフィルターによる景気変動要因の抽出をすすめる.これにより,1990年代以降の景気実感がどのように推移してきたかを分析する. 景気実感の指標に基づき,1990年以降 20年間に及ぶ日本経済の変動(1990年代の失われた以降)の下で所得分布がどのように影響を受けたかについて,基本的には回帰分析を基に分析をすすめる.中国の所得分布については,ここで開発した所得分布関数推定方法を用いて近年の Rural Area に関する所得分布の変動を分析する. ここで得られた研究成果は,ワークショップ等でチェックするとともに内外の学会で発表し,ジャーナルに投稿する.研究成果は冊子としてまとめ公表するものとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PC workstation の購入費用が予定より上昇したためにベルギーでの研究発表を予定していたが今年は取りやめ,次年度に予定することとしたため. 今年度の旅費と合算して,海外での研究発表にあてることとする.
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