2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける自由貿易協定と海外直接投資に関する実証研究
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24530252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
岡部 美砂 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (20434649)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 海外直接投資 / 自由貿易協定 / 東アジア |
Research Abstract |
今年度は研究計画の初年度にあたり、基礎的なデータを収集・加工し、企業レベルの直接投資モデルの推計の準備を行った。24年度の計画は、FTAの直接投資に与える効果のうち、「直接的効果」にあてた分析を行うためのデータベースの収集と加工を行うことであった。FTAの直接投資に対する「直接的効果」の分析とは、FTAが投資を促進する取決めを盛り込んだ協定であった場合に、それらが直接投資に及ぼす効果のメカニズム、および水準を検証するものである。今年度の実績は、必要なデータベースの構築が中心である。まず、対象となる日本の関係するEPAに関する条文を収集し、投資関連についての取決めについての情報を集める作業を行った。これは、先行研究を基礎にすることから開始したが、新しいEPAについての収集と分類の作業には予想より時間が必要であった。先行研究の分類方法に従ってこれらを計量可能なデータに置き換える作業を実施しているが、日本のEPAの全てをカバーするまでかなり時間がかかるため、現在も継続中である。平成24年度の後半10月以降は、上記のFTA投資データの構築と平行して、企業データの収集と整備を行った。企業データは経済産業省「海外事業活動基本調査」を用いたが、申請手続きのため、約2カ月を要した。平成25年1月以降は、これらのデータを推計に用いるためのデータ加工を行った。なお、経済産業省「海外事業活動基本調査」の企業データは申請者本人(科研代表者)のみが、申請した場所・コンピュータに限って作業を行うなど、厳重に情報を保守する必要がある。そのため、作業にはかなり時間を要した。作業は、まず、年毎のデータを企業ごとに接続して、パネルデータとして加工し、その後、産業、規模等の企業特性のデータ、直接投資先、規模等のデータを整理統合して、推計のためのデータベース構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度計画では、FTAが直接投資に与える「直接的効果」の推計・分析を行い、論文の草稿を完成させる予定であった。しかし、分析に必要なデータベースの構築が予定より時間がかかっており、現在は、推計・分析のための準備ができた段階である。計画の遅延の理由として以下の二点があげられる。一つは、FTA投資データが、先行研究から現在まだに成立した日本のEPAが複数あり、また投資条項について詳細な取決めが増えていたことから、収集と分類に予想よりも時間が必要であったことである。二つ目は、企業データの収集と分類に時間がかかったことである。経済産業省「海外事業所活動基本調査」を学術研究に使用する場合は、政府統計の「目的外使用申請」を行う必要があり、詳細な書類と所属機関内の長の申請として届け出た後、審査を経て許可される。これらの一連の手続きに約2カ月を要した。また、データは企業レベルであることから、これらをパネルデータにするためには、詳細なデータのチェックが必要であるため、かなり時間を要する。また、政府統計の使用は、申請者本人(科研代表者)のみが、申請した場所・コンピュータに限って作業を行うなど、厳重に情報を保守する必要がある。そのため、作業は予定より日数を要するものであった。以上の理由から、計画時点よりもやや進捗に遅れがみられるが、データベースの構築は基礎的な部分は完成しつつあるため、今後はデータ構築と、モデル推計を平行して行うことで遅れを取り戻したい。また、一方で24年度は、25年度に行うFTAの直接投資に与える「間接的効果」の研究に必要な、東アジアの非関税障壁に関する研究を2本、平行して行い、学会報告と、ディスカッションペーパーとして完成している(ディスカッションぺーパーは平成25年度中に公刊決定)。これらの研究は25年度に実施する研究の基礎データとしても用いる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前半の早い時期までに、平成24年度中に計画していた、FTAが直接投資に与える「直接的効果」についての推計と分析を完了させ、論文の執筆、報告を行うことで、本研究課題の第一段階の成果を完成させる。これらと並行して、引き続きデータベースの構築を行う。今年度の研究計画は、FTAが直接投資に与える「間接的効果」のうち、貿易促進が直接投資に与える効果を検証することである。まず、対象とするFTAの関税・非関税障壁データを既存のデータベースをもとに補完・整備する。非関税障壁のデータ作成は、本研究代表者が平成24年度中に2編の論文を作成している。これを修正・補足することで学術雑誌へ投稿し、公刊することを目指す。さらに、これを基礎に非関税措置のデータベースの構築を行って、平成25年度の推計に用いる。また、関税データについては、平成25年度から日本の各EPAに関するものを作成するが、可能な限り既存の関税データベースを入手し使用することで、データ構築に要する時間をできるだけ効率的に使いたい。 平成25年度の後半は、間接的効果の分析を行う。これは平成24年度に構築した企業データを用いて、FTAでの財貿易の自由化と、企業の直接投資行動との関係を検証するものである。FTAによる貿易促進と直接投資のタイプ別(垂直型・水平型直接投資)の推計を行う。直接投資と貿易の因果関係に留意し、FTAによる貿易促進が直接投資を変化させる影響と、直接投資が貿易を変化させる影響を区別するために、動学的パネルデータの分析手法を用いて推計する。推計結果に基づいた分析を論文としてまとめ、学会報告を行い、査読付学術雑誌に投稿し公表することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度のデータ構築は、主に日本のEPAのもとでの関税および非関税障壁に関するものである。これらのデータ構築についてのデータベースを購入する。また、関税・非関税障壁データの整理と入力作業のために、リサーチアシスタントを雇用し作業を行う予定である。 また、推計に際して、関連データ・資料の収集のため、アジア経済研究所図書館などでのデータ収集を行うための国内出張を1回、また、研究成果を報告するための学会報告を1回予定している。学会報告は、研究テーマが東アジア地域のFTAであるため、広く内外の研究者からコメントを得るため、国際学会での報告を予定している。さらに、FTAのもとでの企業行動や、データ・資料収集のため、東アジア地域での関連機関や企業での調査のための海外出張を行う。これらの出張旅費、また学会報告登録費などを計上している。 また、論文の形で学術誌への投稿を行うため、英文校正のための費用と、学術雑誌への投稿料を計上している。
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Research Products
(2 results)