2012 Fiscal Year Research-status Report
文化・価値観と経済発展との相互依存に関する政治経済学理論分析
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24530304
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀 宣昭 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50304720)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文化財 / 過当競争 / 労働市場 / シュンペーター型成長モデル / 発展の罠 / Misallocation of talents / 自己実現的期待 |
Research Abstract |
主要なものとして、以下のテーマについて経済理論モデルを開発した。 (1)"International Trade and Dynamic Cultural Diversity Based on Endogenous Innovation Model": 過去の多様な消費経験が、将来の生産者としてのクオリティに影響する文化財生産の動学モデルを開発し、国内文化財産業保護政策の効果を分析した。グローバル化に伴い文化財市場での競争が激しくなると、一時的な保護は国内文化財産業の自立的発展に有効であるが、過度かつ永続的な保護は国内消費者の消費体験が損い、かえって国内文化財産業を衰退させてしまう可能性があることを示した。 (2)"Excessive Competition Trap with Non-Fluid Labor Market": シュンペーター型成長モデルを内生的に失業が生じるよう拡張し、労働市場の流動性と企業の新陳代謝の関係を分析した。新規企業と既存企業が価格競争に陥り、起業が停滞して労働市場の流動性が低くなる「過当競争の罠」均衡と、企業の新陳代謝が活発で労働市場の流動性が高くなる均衡とが、マクロ経済の複数均衡として存在しうること、また、「過当競争の罠」が、近年の日本経済の状況と整合的であることを示した。 (3)"The Development Trap by the Misallocation of Talents with Self-Fulfilling Social Expectations": 労働市場の非対称情報のため、非効率な人的資源配分が、自己実現的な期待による複数均衡の一つとして実現するモデルを開発し、効率的な人的資源配分への移行が遅延する場合には、経済が「発展の罠」に陥る可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が指導する大学院生との共同研究が進展したため、当初の研究目的と多少異なるサブテーマで分析を行わざるを得なかったが、複数の経済理論モデルの開発が進展し、一部については国際学会での研究報告を行い、今後の学会での研究報告が確定しているものもあるため、研究目的の達成はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が指導する大学院生との共同研究をさらに進展させるため、大学院生の進学・卒業に応じて研究組織を再編成し、そのための研究環境の整備を図る。その上で、平成25年度は、まずこれまでに開発した経済理論モデルを、研究報告を経た後、研究成果として完成させることを目指す。 また、研究実績の概要(3)のテーマについて理論モデルを精緻化し、研究報告および研究成果の公刊を目指す。 さらに、経済発展の政治経済学的側面の研究を本格化する。特に「政治体制の内生的移行」をサブテーマとして、近年の文献をサーベイしながら、東アジアの実情に応じた理論仮説を検討し経済理論モデル化を図る。経済理論モデルの開発で一定の成果が上げられた場合は、随時、国際学会等で報し、さらには国際学術誌等への投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、申請者が指導する大学院生との共同研究体制をさらに拡大・充実させるために、大学院生と共同で使用する研究論文作成ソフトや統計分析ソフトを追加購入する予定である(約35万円)。 また、申請当初の予定以上に研究成果の報告・完成を見込むため、研究論文の英文校正のための人件費・謝金支出を相当程度予定する(約50万円)。さらに国内外での研究報告旅費を相当程度予定する(約50万円)。 また、必要に応じて研究文献サーベイのための物品費(図書)支出を予定する。
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