2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530336
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
緒方 隆 九州国際大学, 経済学部, 教授 (50150389)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友田 康信 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30437280)
松尾 美紀 九州国際大学, 経済学部, 准教授 (50437282)
齋藤 隆志 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (60437283)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 人的資本 / 所得格差 / 経済発展 |
Research Abstract |
人的資本クズネッツカーブを扱った既存の理論究においては、強い外部性による人的資本蓄積技術の収穫逓増を仮定し、経済発展の初期段階における家計間の人的資本蓄積の格差拡大を説明していることがわかった。これに対し、本研究では、non-homotheticな効用関数を仮定し、教育支出が奢侈品であることを考慮したうえで、収穫逓減の人的資本形成関数のもとで人的資本クズネッツカーブを理論的導出を試みた。その結果、前述したような強い仮定を設けなくても、家計にとって教育支出が奢侈品であることをモデルに組み込むことにより、人的資本クズネッツカーブを理論的に導くことができ、所得格差の動学的推移を示した点は大きな貢献といえる。この成果を"Human capital Kuznets curve with subsistence consumption level"にまとめ平成24年度中にEconomics Lettersに掲載することができた。 また、2012年2012年8月31日から9月2日に、「先端経済分析研究会」を下関市内で開催した。 本研究プロジェクトに関連する多様な研究分野からの意見交換を目的とするもので、6名の研究者に来ていただき、主に教育とマクロ経済に関する理論分析や、消費者行動に関するミクロ計量経済学を用いた実証分析の研究等を発表してもらい、参加者一同(17名)で活発な議論を行った。コンファレンスを通じ、本プロジェクト計画における理論・実証分析の妥当性について、示唆を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下、本プロジェクトの理論研究と実証研究に分けて、研究の進捗状況を記載する。 理論研究においては、以下のとおりである。我々は、当初予定していた研究成果を学術論文"Human capital Kuznets curve with subsistence consumption level"にまとめ、平成24年度中にEconomics Lettersに掲載することができた。理論研究において、我々の研究プロジェクトは一定の成果を上げることができ、進捗状況は極めて順調であると考えている。今後は、このたび得られたStone-Geary Preference の下で、教育支出が奢侈品になる性質を応用し、人的資本蓄積の動学的経路について、更なる研究を行いたいと考えている。 実証研究においては、以下のとおりである。先行研究の多くでは、人的資本クズネッツカーブは、クロスカントリーデータを用いて実証研究が行われていた。それに対して、本プロジェクトでは、わが国の個票データを用いて都道府県データを構築し、人的資本クズネッツカーブが存在しているかについて、実証研究を行う予定であった。しかし、本プロジェクトの実証研究担当の研究分担者の所属大学の変更が決定したこともあり、データセットの作成が遅れている。詳細は以下『今後の研究の推進方法』に譲るが、実証研究の遅れを取り戻していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論研究において、我々の研究プロジェクトは一定の成果を上げることができており、今後は、Stone-Geary Preference の下で、教育支出が奢侈品になる性質を応用し、人的資本蓄積の動学的経路について、更なる研究を行う。 2013年7月にParisで開催される13th SAET Conference on Current Trends in Economics MINES ParisTechに参加し、本研究の成果を発信するとともに、学会で得られたコメントをもとにモデルの改善に努める。 実証パートでは、理論研究における仮定の妥当性を示すために、教育支出が奢侈品であるかどうかの実証分析を行う。はじめに、既存研究のサーベイを行い、実証分析に備えてデータの収集にとりかかる。データ収集のために、調査会社を利用し、インターネットを利用したアンケート調査を予定している。また、得られたデータに統計的な偏りが無いかをチェックし、データを補完するため、『全国消費調査』等にて都道府県ごとの家計の教育支出をデータベース化する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、日本経済学会や日本応用経済学会をはじめとする国内学会、フランスで開催される国際学会への参加旅費として用いる。また、サーベイの共有化、理論・実証研究の成果の共有化、研究方針の打ち合わせのため、分担研究者による研究打ち合わせを年に4回程度予定し、旅費として使用する。 理論研究においてnon-homotheticな効用関数を仮定すると、動学的経路が複雑になることが予想されるため、数値計算が必要となる可能性を考慮し、Mathmaticaの購入を検討している。実証研究において、統計データ収集のための調査費用、収集したデータセット作成のために雇用するアルバイトの人件費、解析用ソフトstataの購入を予定している。また、理論・実証の両パートにおいて、書籍・文具などの購入を予定である。
|
Research Products
(2 results)