2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530421
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
牛島 辰男 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (80365014)
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Keywords | 持株会社 / 分社化 / 分権化 / 企業価値 |
Research Abstract |
平成25年度においては、純粋持株会社への移行が企業パフォーマンスにもたらす影響の測定を中心に作業を行った。具体的には、金融機関を除く全株式公開企業(2001~2012年)を対象として超過価値(excess value)を計測し、それに対して持株会社がもたらす影響を、回帰分析とpropensity-score matchingの方法により測定した。前者の手法では、組織構造以外の様々な要因(企業規模、多角化、収益性など)のほか、観測困難な企業の異質性を固定効果によりコントロールした上で、推計を行った。後者の方法は、持株会社への移行確率をプロビットモデルにより推計し、同様な移行確率を持つという意味で同質的な(比較可能な)移行企業と非移行企業の超過価値を比べることで、持株会社の効果を推計した。 両手法とも、持株会社への移行が企業価値の低下をもたらす効果を持つことを共通して示した。この結果は、追加的な様々な検定によっても揺らぐことのない、極めて頑健性の高いものである。持株会社への移行が企業の自主的な意思決定の結果であることを鑑みれば、この効果はまさにパズルであり、注目に値する結果が得られたものと考えられる。また、純粋持株会社という「極端」な形をとらずとも、分社化は企業価値の低下を促すという結果も得られた。これらの結果を英文の論文(Diversification, Organization, and Value of the Firm)としてまとめ、大学や官公庁でのワークショップ、研究会にて発表し、有益なフィードバックを得た。また、その前段階において、関連する論文を国外の学会や大学にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にて示したように、持株会社への移行が企業価値の低下をもたらすというパズルの存在は、持株会社ディスカウントという形で極めて明瞭な形で示すことができている。この結果については、すでに公刊可能な論文としてまとめており、様々な機会での発信も行っている。その意味で、研究目的の半分は順調に達成してきているものと自己評価している。 一方で、なぜそうしたパズルが生じるのか(なぜ持株会社が企業価値の低下を促すのか)については、詳細な分析がむしろ今後の課題として残っている。また、プレスリリースや報道資料などの定性的情報の整理のために必要な、十分な知識を持ったアルバイトの確保ができていないため、作業の効率が落ちている面もある。こうした課題はあるものの、プロジェクト全体として見れば、概ね当初の計画通りの進捗具合という評価が妥当であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終年度となる。このため、既にまとめた持株会社ディスカウントに関する論文(Diversification, Organization, and Value of the Firm)を、Asian Finance Association(インドネシア)、World Finance & Banking Conference(シンガポール)等の場で報告した後に、国際学術誌で刊行することを目指していく。ファイナンス、あるいは「法と経済学」系統のジャーナルを想定して、仕上げを行っていく予定である。 持株会社ディスカウントが生じるメカニズムについては、定量的な分析を主に行っていく。上述のpropensity-score matchingの手法によりながら、持株会社へと移行した企業の行動や特性が、非移行企業と比べてどう変化するのか(しないのか)分析していく。分析の対象としては、投資額(資本的支出)、研究開発費、マーケティング費用(広告宣伝費と販売促進費)、人件費、買収件数と額、内部資本市場の効率性指標を想定し、準備を進めているところである。まだ数は限られているものの、持株会社から非持株会社へと逆の移行をする(回帰する)企業も出てきているため、これら企業における変化も参考として分析していきたい。 また、こうした統計的な分析は研究者の独りよがりに陥ってしまう危険が常にあるため、機会を見つけて、企業へのヒアリング調査を行うことで、分析を補完していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であったデータベースが値上がりしたため、作業の進捗状況を鑑み、平成25年度は購入を見送り、平成25年度未使用額と合わせて平成26年度に一括購入することにした。データの分割購入により、未使用額をゼロとすることも可能ではあったが、一括購入の方が費用の節減となるため、この方法をとることとした。 上記の通り、未使用額は全てデータの購入にあてる。データ購入費のほか、国内外での学会での発表、参加のための旅費が、平成26年度の主たる使用用途となる。
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Research Products
(3 results)