2012 Fiscal Year Research-status Report
実証研究によるコーポレート・レピュテーションの測定とマネジメント
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24530574
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
櫻井 通晴 専修大学, 名誉教授 (30083596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 和憲 専修大学, 商学部, 教授 (40176326)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / バルセロナ |
Research Abstract |
研究面では,予定通りの研究成果をあげることができた。最も重要な研究は,コーポレート・レピュテーションが財務業績を向上させるかにかかわる研究であるが,研究分担者の伊藤和憲教授および関谷浩行講師との研究は予定どおり研究を遂行し,コーポレート・レピュテーションの実証研究を完成させて,日本会計研究学会とレピュテーション・インスティチュートの世界大会で報告するまでこぎつけた。本年度は一昨年に引き続き発表もアクセプトされ,6月6日にバルセロナで発表の予定である。日本では9月初めに日本会計研究学会での発表が予定されている。 本年度の研究発表は,知的資産経営学会において,2012年の8月29日に「レピュテーション・マネジメント研究の現状と課題」を,そして日本会計研究学会の関東部会では統一論題で2012年12月1日に「管理会計の質の点検・検証―コーポレート・レピュテーションの視点から―」を発表した。本年度の論文としては,「コーポレート・レピュテーションと企業統治―取締役と監査役の役割との関係で―」『日本内部監査協会』第38巻 第7号, pp.1-9。「IFRSがソフトウエア開発費の会計処理に及ぼす影響」『企業会計』Vol.64 No.8, pp.111-117。「オリンパス損失隠し事件の本質と将来の課題―コーポレート・ガバナンスの観点から―」『専修マネジメント・ジャーナル』Vol.2, No.2, pp.35-46。「管理会計の『質』の点検・評価」『会計』第183巻, 第3号, pp.44-58。および「ソーシャル・メディアの戦略的レピュテーションリスク・マネジメント」『経理研究』No.56/Winter, pp.285-299。その他,著書『管理会計 第五版』(同文舘出版, 2012年7月, pp.1-760.)では,コーポレート・レピュテーションの世界大会の主要記事を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は,3つであった。1つは,Steen Thomsen教授の招聘である。予算もメルコ学術振興会から招聘資金を授与されることになっていた。しかし,予定の1か月前に,デンマーク国内の重要な審議会の委員に選任されると同時に初回の委員会の日程と重なったことを理由に,日本にくることができなくなったとの連絡が入った。その折はすでに,他の6名の日本の著名報告者に予定を取ってもらっていた関係で,日本での予定変更も不可能で,結局は計画を取りやめざるをえなかった。 2つめの若手研究者との研究の推進は,予定通り実施できた。専修大学の伊藤和憲教授,城西国際大学の関谷浩行講師と実証研究を行い,大きな成果を得た。申請時に予定していた改善点を加えただけでなく,因子分析を加えることで,組織価値,社会価値,経済価値のほかに,顧客価値の果たす役割の大きさを知ることができた。レピュテーション指標では,世界標準であるRepTrakにケース・スタディで発見した顧客価値を加えたことも今回の成果の1つである。 3つ目には,海外への情報発信であるが,これも予定通りイタリアのミラノにおいて,ファン・リール教授,チャールス・フォンブラン教授をはじめ,数多くの教授と実務家と海外でのレピュテーションの現状と課題についてディスカッションをするだけでなく,それらの人々に論文を送付して意見を求め,いくつかの意見をいただいた。 以上を総括すると,海外からの研究者の招聘は日本での受け入れ態勢は万全ではあったものの,先方の都合で計画がとん挫したことはまことに残念であったが,他の計画では予想以上の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に,コーポレート・レピュテーションの実証研究の推進する。具体的には,過年度から本年度にかけて,コーポレート・レピュテーションの実証研究を推進してきた。今後は分析の方法を変えるなどによって調査の結果と結論がどのように変わってくるかを深堀りする。第2に,レピュテーションリスク・マネジメントの研究を推進する。レピュテーションリスク・マネジメントのなかでも,ソーシャルメディアは経営者の関心が最も深いテーマの1つである。現在は,翻訳を通じてソーシャルメディア戦略と内部監査の研究を予定している。第3に,IFRSの管理会計と原価計算への影響の研究を継続的に推進する。IFRSを導入するか否かは,ナショナル・レピュテーションに多大な影響を及ぼす。なぜなら,IFRSが目指しているのは,インタンジブルズを対象にしたインタンジブルズ(無形資産)型経済モデルを前提にしているからである,と著者は考える。そのような理由から,本年度も引き続き,IFRSの研究を継続する予定である。とくに,プロダクト型経済モデルに依拠する日本の「原価計算基準」の欠点を指摘して,新たな形の「原価計算基準」を制定する道筋をつけることが原価計算研究学会の会長であった自分のなすべき重要な役割の1つであると考えている。第4に,若手研究者の育成を心がける。ここ20年ほどは,若手研究者の育成を第一に考えて研究を行ってきた。ここ数年はコーポレート・レピュテーションの後継者を育てるべく努力を行ってきたが,本年度は多少範囲を広げて,自らが採用してきた方法論や研究のアプローチを若手研究者に与えていく努力を行っていきたい。第5に,海外への発信を積極的に行う。研究成果を可能な限り海外に発信していきたい。とくに,自らが行うだけでなく,若手研究者も育てながら,海外への発信の方法を指導していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費使用の主要なターゲットは,海外の研究者とのディスカッションに費やしたい。昨年度は申し込みが遅かったためにJALのポイントを活用できなかった。そこで,次年度は早めに海外渡航先を決定して,海外渡航費用を有効活用したい。 人件費に関しては,共同研究の仲間の1人は専修大学の伊藤和憲教授であるが,いま1人はポスドクの関谷浩行氏である。実証研究での分析の多くは関谷氏に負うところが大きい。資料の整理などに関しても関谷氏にお願いすることが多くなると想定される。そのため,予算として20万円を用意した。 その他に関しては,実証研究の成果を発表したあとで,ご協力いただいた会社に対しては,研究成果の論文の送付を予定している。そのための発送費を用意した。 物件費としては,大きなものはほぼそろってきた。とはいえ,図書資料,スキャナーなどの簡単な機器といったものを揃えたい。安いものでもよいが,業務用のカメラも用意できればありがたいと思う。 研究分担者の伊藤和憲教授とは共同研究を行ってきており,本年度はバルセロナでの報告用の論文にかかるであろう翻訳の金額を支払っていただくべく,伊藤教授にその金額をお渡ししたいと思っている。
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