2013 Fiscal Year Research-status Report
実証研究によるコーポレート・レピュテーションの測定とマネジメント
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24530574
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
櫻井 通晴 専修大学, 名誉教授 (30083596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 和憲 専修大学, 商学部, 教授 (40176326)
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Keywords | コーポレート・レピュテーション / ソーシャルメディア / 戦略 / 内部監査 / 実証研究 / 財務業績 / 共分散構造分析 / バルセロナ |
Research Abstract |
平成25年度の研究実施計画では,3つのことを目的とした。1つは,レピュテーションの理論研究の一段の推進,第2は,実証研究の若手研究者との共同研究の推進,第3は,海外への情報発信である。 第1の目的は,初期の目的を十分に達成することができた。本年度の研究の焦点は,昨年に続いてソーシャルメディアにあて,ソーシャルメディアがレピュテーションの向上にどんな役割を果たしてきたかを明らかにした。その成果の1つは,『月刊 監査研究』に「ソーシャルメディアの内部監査ー戦略的レピュテーションリスク・マネジメントー」と題して発表した。加えて,ScottとJackaのAuditing Social Mediaを櫻井通晴・伊藤和憲・吉武一監訳『ソーシャルメディア戦略ーガバナンス,リスク,内部監査ー』と題して,日本内部監査協会から翻訳書として上梓した。 第2の目的は,専修大学の伊藤和憲教授,城西国際大学の城西国際大学講師(現在は北海学園専任講師)の関谷浩行講師とともに,3名で実証研究を行い,その研究結果を「コーポレート・レピュテーションによる財務業績への影響」と題する論文にまとめた。その論文は,平成26年に日本会計研究学会誌『会計プログレス』から発表されることが決定している。 第3の目的は,前年度に研究を終了して国内での発表を終了している実証研究の成果である,Michiharu Sakurai, Kazunori Ito, Katsuhiro Ito, Shuichi Shinmura, ”The Influence of Corporate Reputation on Corporete Value: Based on Emperical Research Results”を,Reputation Instituteの年次世界大会(Barcelona)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,計画した研究は90%程度は達成している。理論研究は予定した通り,十分に行った。若手の研究者との研究成果も予定通り実施した。海外への研究成果の発表も,アクセプト率が低い中で,幸運にもアクセプトされた。 理論研究は,自らの意思で行うことができる。当該年度はソーシャルメディアがレピュテーションに及ぼす影響を研究したが,研究成果として3つの成果を生み出した。実証研究は,一昨年は成蹊大学の伊藤克容・新村秀一教授に加えて専修大学の伊藤教授と櫻井をメンバーにして行ってきたが,本年度は専修大学の伊藤教授と城西国際大学の関谷浩行講師とともに3名で行った。海外への情報発信は前年度の研究成果をもとに行った。いずれも予定した通りの成果を上げることができた。 予定の100%に達しなかった理由は,1つは,予定には達したが理想には届かなかったためである。いま1つは,理論研究において,新たな研究テーマであるカントリー・レピュテーションを高めるための日本の原価計算基準の問題点の洗い直しと新たな基準の作成にも努力をつぎ込んだため,厳密にコーポレート・レピュテーションの研究は100%とは言えないと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,研究の最終年度である。コーポレート・レピュテーションの研究は,日本では全く新たな研究領域であった。そのため,全く白紙の状態からこのコーポレート・レピュテーションの研究が始まったのであるが,苦節10年で,数多くの研究論文と3冊の著書を上梓して,幸いにもレピュテーションの研究は日本でほぼ定着してきたと思われる。科研費が与えられたことに感謝している。現在ではようやく海外への情報発信を希望しても,アクセプトされるようになった。後継者も相当数が育ってきた。 そこで,コーポレート・レピュテーションの次には,カントリーレピュテーションの研究を徐々に行っていきたいと考えている。ただ,考えているだけでなく,実行に移し始めている。具体的には,管理会計と原価計算の研究領域でカントリーレピュテーションを高める方策の1つとして,1962年に大蔵省の企業会計審議会が制定した「原価計算基準」の研究を始めている。この「原価計算基準」は,制定以来,半世紀も放置されている。この約50年の間に,原価計算の理論も,財務会計基準も,IFRSによって要求されている会計基準も大きく変貌した。IFRSそれ自体はコンバージェンスの段階でもあることから「原価計算基準」が古いままでも決して困るわけではないが,カントリーレピュテーションという側面からすると望ましいとはいえない。このような理由から,カントリーレピュテーションの立場から,「原価計算基準」の研究を徐々に行い始めたのである。この研究は本年度も積極的に進めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に最も金額の大きな経費は,アトランタでのアメリカ会計学会における発表のために,旅費がかかることである。総額で70万円程度と予想される。そのため,本年度の予備として予算を意図的に残しておいた。とくに共同研究者に渡した予算の残が多いのは,報告では一緒にアトランタ入りするので,そのための資金を蓄えるためであると聞いている。 本年度に最も金額の大きな経費は,アトランタでのアメリカ会計学会における発表のために,旅費を中心に支出する。総額で70万円程度と予想されるが,出張では予想外の経費が掛かるのが常である。なお,その他の費目については,予定と大きく異なるところはない。
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