2012 Fiscal Year Research-status Report
近世-近代移行期における祭りのオーソプラクシー化と社会変動の研究
Project/Area Number |
24530606
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
吉田 竜司 龍谷大学, 社会学部, 教授 (10291361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 滋 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60155132)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オーソプラクシー / 祭礼 / 曳山祭 / 近世-近代移行期 / 社会変動 |
Research Abstract |
曳山祭の事例研究については、鳥取県(東照宮祭礼、聖神社御幸祭、鹿野城山神社祭礼)、愛知県(名古屋東照宮祭礼、若宮祭り、熱田まつり)、秋田県(大館神明社例祭、鹿角花輪ばやし)にて計8祭礼についてインタビュー、ならびに資料収集をおこなった。 これらの調査をとおして、少なくとも近世段階における祭りのオーソプラクシー化については、例外はあるものの、基本的に町場をとりまく政治的環境―すなわち領主が譜代系か外様か―が、祭礼の発達の道筋や発達時期に違いをもたらしているらしいことがわかった。すなわち、譜代系大名が領する町場においては、城下町確立から比較的早い時期に祭りが成立し、藩主とのつながりを保ちつつ曳山祭礼へと発達していくが、東照宮祭礼に典型的なように、明治以降は衰退する傾向にある。いっぽう、外様大名が領する町場においては、総じて近世中期から後期にかけての在郷町伸長期に、町民主導のかたちで曳山祭が成立し、明治以降も続けられるか、より華美な形態へと発達する傾向が見られる。ここから、譜代系か外様かによって、町場支配の様式が異なっており、そのことが町場経済の発達様式や町民自治のあり方に影響をもたらすことで、祭りの発達過程の違いをもたらしているのではないかとの仮説を得ることができた。 近代化論の理論的検討については、研究分担者を中心に進められ、P.クラストルの政治人類学的知見を取り入れることで、オーソプラクシーの政治的機能、すなわち社会の機能分化が支配関係へと転化することを抑止する機能についての理論的発見がもたらされた。ここから、祭りのオーソプラクシー化が、前近代のみならず近代においてもなぜ求められ続けるのか、祭りのオーソプラクシー化はなにゆえ慎重にコントロールされなければならないのかについての新たな知見へと結びつくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「官祭的性格の強い東照宮祭礼を、近代以降衰退した事例と変質しながらも存続した事例の両者にわたって調査する」という当初予定していた方針に沿って、概ね事例研究を実施することができた。加えて、近世前期に起源を持つ城下町祭礼と、近世中期以降に発達をみた在郷町型祭礼の事例研究も進めることができた点では、当初の予定を上回るペースで事例研究が進んでいるといえる。これらの調査から、近世における祭りのオーソプラクシー化を促す社会的条件について、〈東照宮祭礼を典型とする官祭/領主権力から一定の距離を置きつつ発達した町衆主導の民祭〉という祭礼主体に関する比較軸に加えて、〈譜代系大名支配の町場/外様大名支配の町場〉という町場の政治環境に関する比較軸が浮かび上がってきたことは、本研究の目的にとって重要な知見を付け加えることとなった。 また、「オーソプラクシー化を取り込んだ近代化論の構築」についても、P.クラストルの、戦士が戦闘へ無限に専心することを促す社会的圧力が戦士身分の支配階級化を抑止しているとの指摘(「国家に抗する社会」)を〈戦士のオーソプラクシー化〉と読み替えることで、オーソプラクシーの政治的機能についての知見を深化させることができた。この点においても、理論面でも本研究の目的へと着実に歩を進めつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
事例研究と理論研究を同時に進行させるという、今年度の研究方法を踏襲する。 事例研究においては、これまでわずかしか明らかになっていない、近代初期(明治大正期)における曳山祭の盛衰に焦点を合わせ、近代以降オーソドキシー化を辿った祭りと、逆にオーソプラクシー化を辿った祭りの比較を念頭に調査事例を選定し、事例研究を行う。 理論研究においては、オーソプラクシーとともに、オーソドキシーが近代化にとって有する政治的機能を比較可能な理論的視点の確立をめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
曳山祭の事例研究として、岡山県、鳥取県、愛媛県等へ、2泊3日×4回程度の調査をおこなうほか、祭礼・郷土史関係資料の収集、ならびに祭礼研究関係図書を購入する。 また、インタビューをはじめとする調査データの整理のために、2名×30時間程度の調査補助を依頼する。 近代化論の理論研究として、社会学・人類学関連書籍を購入する。
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