2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530665
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
藤川 賢 明治学院大学, 社会学部, 教授 (80308072)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境問題 / 公害 / 解決過程 / 被害放置 / 健康被害の補償救済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公害・環境汚染問題の事例比較を通じて、世界に共通して見られる解決過程の諸問題と、それにたいする実践的取りくみについて解決過程論を組み立てるための土台づくりをめざすものである。2015年度は、当初計画を一年延長して、補充調査と理論枠組みの確認を中心とする研究活動を行った。 事例研究の補充調査において中心的な課題としたのは、公害にかかわる健康影響の範囲をどこまでどのように広げて予防対策などを行うかという点である。それについて、これまでの制度や医学にかんする調査を踏まえ、今年度は、富山県神通川流域(慢性カドミウム中毒)および宮崎県土呂久(慢性砒素中毒)について、住民健康調査の受診率向上に向けた関係者の取り組みについて明らかにした。 関連して、調査継続の意義、公害問題と対策の次世代継承・教育普及について学んだ。近年こうした継承活動が大きく進んだ背景としては、被害住民・支援者と原因企業ないし行政との間で、厳しい対立や紛争の歴史を乗り越えた一定の協力関係がつくられた成果も大きい。この点で富山と宮崎での取り組みの意義と成果は、他地域の事例にも参考になると期待される。 理論的枠組みにかんしては、問題軽視・被害切り捨ての動きと対策を求める動きとの関係を中心に考察した。事例から見えてきたことの一つは、補償救済の枠組みが被害を区分する構造的な状況である。それは放置の構造と深くかかわる。補償救済を制度化する行政に、政治的・経済的な外部要因が影響を与えていく仕組みが形成されていくのである。それに対抗する動きが葛藤・軋轢の中で多様な成果をあげていく解決過程は、事例ごとに特徴がある。それについて、インド・ボパール事件などの他国の事例と比較しつつ、日本の公害・環境問題における特徴を整理した。現在、それを統合した報告をまとめているところである。
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Research Products
(2 results)