2013 Fiscal Year Research-status Report
現代都市社会における時間・空間の生産・流通・消費と編成の社会学的研究
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24530670
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
若林 幹夫 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40230916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南後 由和 明治大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10529712)
田中 大介 日本女子大学, 人間社会学部, 講師 (10609069)
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Keywords | 都市 / 時間 / 空間 / 消費 / 情報 / 建築 / 交通 / ショッピングセンター |
Research Abstract |
本研究は、現代都市社会を時間と空間の社会的生産・流通・消費の形態という点から明らかにするために、ショッピングセンター・ショッピングモール(以下、SC・SMと略記)を主要対象として調査・研究を進めてきた。本年度の研究では、現代日本におけるSC・SMの現状を数量的データに関して通時的に整理し、その定性的なあり方の変化を、1970年代以前のSC前史の時代、70年代~80年代の郊外型SCの増加と消費社会化の時代、90年代以降のSC・SMの大規模化=モール化の時代に大きく分け、SC・SMがどのような都市社会の状況の下で、都市型巨大商業施設をいかなる場として提示し、そこからどのようなライフスタイルや意味が発信されてきたのかを、〈コミュニティ〉、〈カルチャー〉、〈エンターテインメント〉、〈エコロジー〉とった社会的な意味論との関連で明らかにした。さらに、そうした巨大な商業施設の建築空間としての特性が、1970年の大阪万博で実験的に試行された都市工学・建築工学の現実の都市空間への応用であることを明らかにし、そうした空間が「長い時間をとりとめもなくぶらぶらする」という時間消費型の消費行動を可能にする装置であること、そのような空間における行為がインターネットにおけるブラウジングと親和性をもつものであることなどを明らかにした。さらに、こうした空間が近代の都市空間を生み出してきたパサージュ、デパート、ユニバーサルスペースなどの特性を引き継ぎ、また現代商業資本の柔軟で多角的な展開と相乗することにより、巨大で柔軟な空間のなかに「均質な多様性」と呼ぶべき消費の空間を生み出していること、今日ではそうした施設がデパートのような先行する大規模商業施設をもテナントとして取り込み、また既存の商業施設がモール化をめざしたりするなど、「社会のモール化」と呼びうる時代を生み出していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度当初の計画どおり、年度中に研究成果を若林幹夫編著(田中大介・南後由和・楠田恵美共著)『モール化する都市と社会――巨大商業施設論』(NTT出版、350頁)として刊行することができた。また、この著作をもとに労働経済学、経済地理学の研究者をはじめとする隣接諸領域の研究者を交えての合評会を行うこともできた。 これらの作業と並行して、都市空間における時間性の分析や、現代都市の建築空間とメディア化についての研究や、モビリティという視点から見た現代都市の研究のための資料の収集・データの蓄積も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に上記の書籍の形で一定の成果をまとめることができたので、26年度はその成果をもとに、27年度以降の研究に繋がる調査対象として東京湾岸地区を選択し、これまでの研究成果と照らし合わせつつ、湾岸地区の都市空間としての現状を、その歴史的形成過程、都市開発・再開発、イベント、娯楽施設等による空間やイメージの形成、交通ネットワークと流通拠点の形成と展開といった点から明らかにするための資料の収集と実地調査を行う。研究体制は、若林が「都市空間とその時間性」、田中が「都市とモビリティと情報化」、南後が「イベント・再開発と建築空間」を主たるテーマとして、これまでの研究成果に対するさらなる実証的な検討をおこないつつ、東京都市圏という現代日本を代表する都市の具体的なあり方にそくして、現代都市を支える時間と空間の社会的な論理を明らかにしてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内の商業施設のフィールドワークを次年度も実施することにしたため。 都市論・消費社会論に関する文献の購読を次年度も継続することにしたため。 また、研究の進捗状況により、全体のとりまとめをあわせて最終年にするため、研究費の一部の執行を次年度にもちこしたため。 資料となる文献、雑誌・新聞記事などの収集を継続して行うとともに、東京湾岸地区を中心とするフィールドワークによる資料の収集をおこなう。また、上記作業のために必要な情報処理機器や機材の購入を行い、それらを用いて研究を実施する。
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Research Products
(8 results)