2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530722
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
于 洋 城西大学, 現代政策学部, 准教授 (60386521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
包 敏 広島国際大学, 医療福祉学部, 准教授 (00352013)
金 成垣 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (20451875)
埋橋 孝文 同志社大学, 社会学部, 教授 (60213427)
真殿 仁美 城西大学, 現代政策学部, 助教 (70412781)
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Keywords | 社会保障 / 生活保護 / 適度普恵型福祉 / 東アジア福祉の比較研究 / 中国版皆年金体制 / 家族依存型 / 見取りケア / 障害者社会保障制度 |
Research Abstract |
本年度も、研究グループのメンバーはそれぞれ「中国の弱者層と社会保障制度」を中心に自主的研究活動を行なってきた。于は中国の社会保障制度における最新動向や年金制度の再構築をテーマに研究を進めてきた。年金制度の再構築に関する研究では、1990年代後半に創設された新しい公的年金制度の再構築の過程を考察し、中国政府が進めている「中国版皆年金」体制に対して、負担と給付の両面から「適度」と「普恵」の尺度を借りって評価してみた。また、日本の公的医療保険制度における医療費の抑制メカニズムや、都市計画やコミュニティ計画の観点から考えられる新たな高齢者福祉サービスの提供方向についても日中の比較研究を行なった。 埋橋は日本の生活保護制度と東アジア福祉に関する比較研究の方法論をテーマにして、着々と研究を進めてきた。 包は中国の「弱者層」社会福祉政策の展開における新しいマンパワーであるソーシャルワーカーの役割を解明していくことを念頭に、本年度は主に資料収集及びフィールド調査を中心に研究を行なってきた。2010年から2012年末までに中国国内で発表されたソーシャルワーク専門人材の育成に関する4つの重要文書について、それらの内容及び公布背景の分析を行なった。 金は「後発型」と「家族依存型」という大きなキーワードをベースに、東アジア諸国・地域の社会保障や福祉国家の特徴とその要因また現状と問題点についての研究を行った。具体的にいうと、遅れて社会保障および福祉国家の整備に乗り出した(乗り出している)、いわゆる「後発型福祉国家」としての日本、韓国、中国にみられる「家族依存型福祉国家」といった特徴を分析し、その具体的な中身から各国の類似点・相違点を明らかにしようとした。 真殿は障害者福祉のなかでも、障害者社会保障制度の整備について重点的に研究を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年3月末現在の時点では、交付申請書に記載した「研究の目的」の達成のために順調に研究を進めていると判断される。後に記載するように、我々は今年度において多くの研究成果を各種の学会・研究会をはじめ、学術誌や専門書にも発表してきた。最後の年度である2014年度において、現地調査で得られた知見を実証分析で理論化していく予定である。また、国内で日中韓の研究者によるシンポジウムの開催も企画している。 于は全体の統括として分担者と連絡を取りながら、バランスよく研究を進めていく役目を果たしたと思われる。また、中国の社会保障制度の展開と現状に関する報告書『中国の社会保障制度の現状と動向』(日本科学技術振興会)と“中国版皆年金”体制の構築に関する論文「「適度普恵型」福祉と「中国版皆年金」体制の構築」(『東亜』No.552)などを発表した。埋橋は日本の生活保護制度と東アジア福祉に関する比較研究の方法論をテーマにして、着々と研究を進めてきた。その一部の成果を宮本太郎編著『生活保障の戦略』(岩波書店)と『社会事業史研究』44号に提示した。包は中国における「弱者層」社会福祉政策の展開研究による中国でのフィールド調査を実施した。中国の都市部における高齢者福祉施設・機関の訪問調査を行った。金は現在まで、各国における歴史研究の成果をふまえながら、主に文献研究を中心とした比較分析を行ってきた。その結果をいくつかの論文としてまとめている(下記の研究成果を参照)。ただし、現在までの研究が主に歴史分析に焦点が置かれており、他方で、実態調査などにもとづく現状分析については不十分であったという点が、限界として指摘できる。真殿はこれまで文献の収集および、集めた文献の分析を中心に取り組んできた。一方で、現地での聞き取りは着手できていない。そのため、目標とする地点にはまだ到達することができていないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究グループとしては、今後計画通りに研究を進めていく。具体的に、これまでの成果として得られた歴史展開と制度の現状に対する理解を、現地調査などを通してさらに検証していく。研究費については、前者の歴史・現状分析に関しては、資料収集・現地調査の費用、そして理論研究に関しては、文献研究や学会・研究会での報告・討論のための費用がかかると予想される。 于は24、25年度の成果を踏まえ、医療サービスの提供を「適度普恵型」社会福祉の観点から分析していく。特に、負担の面と給付の面における「適度」の評価基準を考えて行きたい。埋橋は引き続き東アジア福祉の比較分析を行なう。包は引き続き文献を集め、最新の研究動向を把握し、さらなる研究に活かしたい。できれば中国国内のソーシャルワーク教育に従事する研究者と交流をふかめ、現在中国におけるソーシャルワーク教育機関での最新の動きをとらえたい。昨年末、フィールド調査で得たデータをさらに分析し、まとめる。金は今後、「後発型福祉国家」にみられる「家族依存型福祉国家」といった特徴が、各国における人々の実際の生活にいかなる影響を及ぼしているかという点に着目しつつ、実態調査を行いたい。そこからみえてくる問題点を明らかにし、その問題点の解決策を考慮に入れた政策論を展開していきたい。真殿は今後の研究のすすめかたとして、制度が目指す方向性と実際に展開されている水準との距離または相違に目を向ける。これまでの文献研究から得られた成果をもとに、調査地での聞き取りを行ない、制度の運用と進展について探っていく。中でも、特定項目制度が目指している障害者のニーズの把握がどのような過程を経て行なわれているのか、という点に注目する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた現地調査に関しては、先方の都合により実施できなかったことによる影響と、それとも関連する現地調査資料の入力と整理業務(研究補助員=学生アルバイト)が予定より遅れたことによって、当該年度の実支出額が当初の申請額より減り、次年度使用額が生じてしまった。 次年度使用額については、平成25年度に実施できなかった現地調査を実行させ、さらに現地調査から得た情報とデータを研究補助員(学生アルバイト)に頼み、入力と分析を確実に行なっていくつもりである。
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Research Products
(20 results)