2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530759
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 順子 佛教大学, 福祉教育開発センター, 講師 (80329995)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | フランス共和国 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
平成24年度は研究協力者・重頭ユカリ農林中金総合研究所主任研究員と共にフランス共和国訪問調査を行った。訪問先はAssociation pour le droit a l'initiative economique(Adie)をはじめ、独自の発展を遂げている協同組合銀行のケス・デパリュニュ、ケス・デポ、クレディ・アゴリクル、クレディ・コープラティフ及びカソリック慈善団体のスクール・カソリックである。 フランス共和国では低所得層向融資(microcredit personalle・主な貸付使途は個人が就業する際の自動車購入費等である)と共に、起業するための資金(microcredit professionalle)を融資する多様なマイクロクレジット機関が存在し、政府による社会統合基金の設置がこれらの発展につながったと言えよう。 また、アディ及びスクール・カソリックではボランティアを中心とした支援機関が借受人に対する相談活動を行っており、クレディ・アゴリクルにはポアン・パスレルが、ケス・デパリュニュにはパルクール・コンフィアンスが置かれ、借受人への相談にあたっていた。このように銀行が低所得層向の相談支援部門を設けることは画期的である。 さらに、平成24年度は本研究を補足するためにアメリカ合衆国ニューヨーク市及びペンシルバニア州フィラデルフィア市のマイクロクレジット機関を訪問した。とりわけフィラデルフィア市におけるマイクロクレジット機関であるWomen's Oppotunity Resorce Center(WORC)は低所得層の起業に対する融資だけでなく、個人開発口座の活用、起業支援講座の開催、起業後の定期的なフォローアップを行っており、これらの取組みは低所得層の経済的安定の一助となり、移民・難民のコミュニティを結束させて社会的包摂に重要な役割を担っている事が確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実績の概要において述べたように、当初の研究目的の一つであるフランス共和国におけるマイクロクレジット機関等を訪問し、ヒアリング調査と資料収集を行うことができた。 また、当初計画以上の進展の理由として、連携研究者・小関隆志明治大学准教授(ペンシルバニア大学・客員研究員)の協力を得て、先進国におけるマイクロクレジットの発展ではフランス共和国と双肩をなすアメリカ合衆国のマイクロクレジット機関等を訪問調査を行った事が挙げられる。そこでは、マイクロクレジット機関職員のみならず、実際にクライアントからヒアリング調査を行なうことができた。 現段階での結論として、第1に、フランス共和国では社会統合基金が、アメリカ合衆国では地域再投資法が、マイクロクレジット機関の発展を促し大きな役割を果たしていることが伺えた。 第2に、何を持ってマイクロクレジットの効果を評価するかという論点について、フランス共和国及びアメリカ合衆国を訪問調査することによって示唆を得ることができた。この論点は、昨今の「マイクロクレジットには貧困を軽減する効果がない」という言質に対して、クライアントのインタビュー調査によって利潤を上げる事だけではなく、生活の安定感、コミュニティの中での相互の密着感の増進、家族関係の結束の強化等の複合的な要素を元にマイクロクレジットの効果を判断すべきであると理解できた。 今年度は必要に応じてフランス共和国におけるマイクロクレジット機関等に対する補足調査を行い、同時に日本のマイクロクレジットについて、低所得層向けの公的融資機関である生活福祉資金貸付事業を実施主体(都道府県社会福祉協議会)及び非営利金融法人等を対象にアンケート調査や訪問調査を行なう事によって、日本におけるマイクロクレジットの実態と課題を明らかにし、引き続き本研究を深めたいと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究の推進方策は次の2点を主眼としている。1点目は、連携研究者・角崎洋平立命館大学専任研究員と共に日本における低所得層向の公的融資制度である生活福祉資金貸付事業の実施主体である都道府県社会福祉協議会及び非営利金融法人等を対象としたアンケート調査並びに訪問調査を行い、日本におけるマイクロクレジットの実態と課題を明らかにし、引続き本研究を深めることである。 2点目は、フランス共和国におけるマイクロクレジットについてはPELS(Project et Economie Locale Sociale・融資による地域活性化事業)の成功事例であるフランシュ=コンテ地方の訪問調査によって補足調査を行いたい。 なお、生活福祉資金貸付事業については都道府県社会福祉協議会に対するアンケート調査を実施しさらにヒアリング調査を行なう。調査項目はとりわけ就労へのインセンティブとなる生業費・就労支援費について、①生業費および就業支援費はどの程度活用されているか②借受使途は何か③相談者が貸付に至らない場合の理由は何か④相談者及び借受人の属性はどのようなものか⑤償還に向けての支援はどの様に行っているか⑤就労支援と貸付はどのようにリンクしているか⑥償還金遅延の際の処理はどの様に行なわれているか⑦その他である。 また、グリーンコープ生活協同組合ふくおか及びくまもと、岩手県及び青森県消費者信用生活協同組合等を訪問して貸付のスキーム及び他府県への波及が可能となった要因等についてヒアリング調査を行い、可能であれば借受人へのインタビュー調査を実施したい。さらに、非営利融資を行っている女性・市民コミュニティバンク、難民支援協会等のマイクロクレジット機関等を訪問調査し、公的融資事業と民間非営利融資事業の特色を対比させることによって、今後の日本におけるマイクロクレジットの方向性を見出したいと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、平成24年3月31日時点(平成24年度分)の残研究費は平成25年3月に行ったフランス共和国訪問調査に係る旅費等の精算に必要なために費消する事務手続きが進行中である(本報告書作成時点)。 平成25年度の研究費の使用計画は、今後の研究の推進方策に述べたように、フランス共和国訪問に係る研究代表者分の旅費・宿泊費・出張旅費、通訳・資料翻訳謝金等及び日本におけるマイクロクレジット機関等訪問調査に係る旅費・宿泊費・出張旅費等である。具体的には、京都⇔パリ⇔ブザンソン(フランシュ=コンテ・ブザンソン市)の研究代表者分の旅費・宿泊費・出張旅費、謝金等及び京都⇔神奈川・東京、京都⇔福岡・熊本、京都⇔青森・岩手等の国内訪問に係る研究代表者及び(または)連携研究者・角崎洋平立命館大学専任研究員分である。
|
Research Products
(2 results)