2012 Fiscal Year Research-status Report
社会的エージェント資源モデルの構築に向けた総合的研究
Project/Area Number |
24530785
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 俊和 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70131216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉澤 寛之 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (70449453)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会系心理学 / 教育系心理学 / 社会化 / エージェント / 包括的資源 / 社会的情報処理 / 自己制御 / 発達的差異 |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、家庭、友人・仲間集団、近隣住民、学校など青少年の社会化に寄与する環境要因の多層的な影響を明確化することを第一の目的とする。各要因を社会化のエージェントとみなし、各エージェントの個別の寄与と、それぞれが相互作用することにより社会化に及ぼす影響を明確化する。第二に、社会化の各エージェントは望ましい社会化に向けて影響を及ぼす効果的資源をそれぞれ個別に有するとみなし、互いがそれらの資源を補完するだけではなく、一人の社会化の主体を取り巻く全エージェントの包括的な資源が、主体の社会化の成否を決定付けるとする社会化資源エージェントモデルの提唱に向けた研究知見の蓄積を目的とする。 本年度は研究1として、大学生を対象に回顧法を用いた予備的調査を実施した。「社会化エージェントの最適機能領域の明確化」と「社会化エージェントの相互補完的機能の明確化」に関する検討を行った。中学生(もしくは小学生)時代の養育者、教師、近隣住民、友人・仲間集団について、各エージェントの機能を測定し、現時点での社会化の程度を反映する指標として社会的情報処理傾向や社会的自己制御能力との関連を分析した。 社会化エージェントの最適機能領域の明確化に関する分析結果では、養育の応答性や友人の受容などのprotection領域は情報処理バイアスに抑制的に機能し、養育の統制などのcontrol領域にも同様の機能が見出された。しつけや、私的交流、教師の熱心な指導はguided learning領域に該当し、この領域は規範意識の向上に寄与していた。社会化エージェントの相互補完的機能の明確化に関する分析結果では、仲間集団から適切な働きかけを得ていないとき、家族ネットワークの豊富さは情報処理バイアスを緩衝する一方で、近隣ネットワークの豊富さはそうしたバイアスをむしろ強化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、大学生対象の回顧法を用いた予備的な調査を実施し、中学生対象の本調査への準備を完了することができた。予備的調査であるものの、分析からは本研究で想定するモデルの妥当性がおおむね支持される結果も得られている。また、研究分担者の所属における小中学校の校長歴任者である事務員から協力を得て、小学校と中学校の調査実施協力校への打診をほぼ完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、平成24年度の研究計画で達成できていなかった計画の実施と、それに対応させ調整した平成25年度の当初計画を実施する。平成25年度の予定として、小学生と中学生を対象とした調査および近隣住民を対象とした郵送調査の実施と分析により、社会化エージェントの最適機能領域の明確化と、社会化エージェント機能の影響に関する発達的差異、社会化エージェントの相互補完的機能の明確化に関する検討を行う。併せて、相互補完性に関する縦断的パネル調査を実施する研究分担者所属の附属学校各校への調査依頼や、本研究のモデルの文化普遍性を検討するための国際比較調査の準備を実施する。大学生対象の調査結果については、次年度の各学会での発表を4本予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費はおおむね予定通りに執行している。平成25年度分の使用予定の内訳として、調査のデータ入力のアルバイト代や調査用紙等の輸送費、小中学校への調査依頼・実施のための旅費、統計分析パッケージの購入費、海外研究協力者との打ち合わせおよび通信費用、調査項目のバックトランズレーションなどの翻訳費用、研究成果の発表にかかわる費用が想定される。
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