2013 Fiscal Year Research-status Report
原子力災害時のリスクコミュニケーション:内容分析と再現実験に基づくモデルの再構築
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24530800
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
竹西 正典 京都光華女子大学, 人文学部, 教授 (60216926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹西 亜古 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (20289010)
金川 智惠 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (70194884)
原田 章 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (10263336)
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Keywords | リスクコミュニケーション / 原子力災害 / 福島 / コンテンツ分析 |
Research Abstract |
研究計画2年目に当たる平成25年度の実績は、次の3点にまとめられる。 1.原子力災害時のリスクコミュニケーションの実態を「リスクメッセージの2基準モデル(竹西ほか,2006)」をベースに新たに作成した詳細な分類基準に基づいて分析した結果を論文にまとめ発表した。論文では、福島事故の際に国(政府官邸)が行った発表(2011年3月12日午前から4月11日午後までの55のリスクメッセージ)を対象にした。この間の原子力災害の事態進行を、時系列に沿ったトピックによって「ベントを巡る動きと避難拡大(1期)」「原子炉・燃料プールへの注水と放射性物質の外部放出(2期)」「食品の放射能汚染による出荷・摂取制限(3期)」「汚染水の海への流出・放出(4期)」に分けて分析したところ、事実性に関わるコンテンツ量はほぼ一定であったが、配慮性に関わるコンテンツ量が変化し2期で最も少ないことが明らかになった。また、冗長性に関わるコンテンツ(同じ情報の繰り返し)が2期と3期で15-20%にのぼっていた。全体を通してみると、今回の原子力災害における政府のリスクコミュニケーションは、事故の事実と事故に対する対処能力を示して国民の納得を得るためのコンテンツが6割、国民に対する配慮を示しリスク管理者としての姿勢を表明するコンテンツが3割、新たな情報を加えることなく既存情報を繰り返すコンテンツが1割であったことが明らかになった。論文では、このようなリスクコミュニケーションの実態から課題や改善の方向性を考察した。 2.同様のコンテンツ分析を、もう一方のリスク管理者である東京電力の発表に関しても実施した。この結果は今後、論文にまとめ発表する予定である。 3.次年度に実施予定の調査(リスクメッセージに対する受け手の反応の検討)に向けて、社会人200人を対象とする予備調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的のひとつである、原子力災害時のリスクコミュニケーションの実態を心理学的モデルから分析し検証することはほぼ達成できたといえる。またこの点については、発表した論文が大学のリポジトリから閲覧可能となる予定で、研究結果を広く国民に還元できる。もうひとつの目的である受け手の反応の検討、それによるモデルの再検討に関しては、当初計画で平成25年度に予定していた受け手の反応調査の本調査が26年度にずれ込むこととなったことはマイナスの評価要因であるが、25年度に予備調査を実施し、質問項目の吟味を行えたことはプラスの面として評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は以下の課題について達成する。 1.リスクコミュニケーションの受け手の反応を実験操作(メッセージ要因の操作)を加えた調査によりデータ収集し、多変量解析を用いて分析することで、リスクメッセージの2基準モデルの適合性を検討する。 2.東京電力のリスクコミュニケーションを対象としたコンテンツ分析結果を論文にまとめる。 3.3年間で得られた研究結果を総合し、原子力災害時のリスクコミュニケーションのあり方を考察し、まとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施予定であったリスクコミュニケーションの受け手の反応を検討する実験的調査(本調査)が、平成26年度実施となったため。 平成26年度に、本調査をWeb調査として実施するための費用として使用する。
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