2014 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害幼児の手話の統語的ルールとしての格関係の獲得について
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24530821
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
瓜生 淑子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (20259469)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 聴覚障害幼児 / 手話の活用 / 音声日本語 / 心の理論 / バイモダル表現 / 文末の話者明示の指さし / 統語 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)一昨年度から定期的に訪問観察を行っている公立ろう学校幼稚部で観察対象児たちが5歳児になったが,引き続き訪問観察を続け,ひらがなの習得が進む中,格助詞など音声日本語の統語標識への意識化が図られる一方,手話表現も巧みになっていく子どもたちの保育時間の観察データをビデオで収集した。 2)あわせて,5歳児クラスの1女児A子の手話および音声発達について,家庭の協力も得て,個別データを収集した。「心の理論」テストの半年ごとの実施では,結果が不安定であったが,より子どもに課題状況がなじみやすい「アンパンマン課題」では,前年度に引き続き安定した結果が得られ,聴覚障害児には適した課題であることがとくに示された。 3)A子の3歳後半期の手話・口話のバイモダルな表現事例を検討し,口話と手話との単語レベルでの不一致表現(5パターン)のうち,特徴的だったのは,手話モダリティの文末に話者(A子)を明示する指さしが見られることであった。この特徴は成人の日本手話でも特徴的とされる表現であるが,この不一致表現の存在から,A子が,統語獲得の初期であるこの時期に手話・口話それぞれのモダリティごとに統語構造を学んでいる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ろう学校幼稚部における観察で,教員・保護者から観察や言語発達追跡調査に多大な協力を頂き,3年間のデータを得ることができた。平成26年度は,観察補助者を2名確保でき,ほぼ毎週,保育観察データが得られた。 2)小学部入学後の授業観察にも協力頂ける見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
1)小学部入学後の国語等の教科学習時の手話・口話の併用状況について観察し,日本語獲得における手話の意義について引き続き検討を進めたい。 2)A子の幼稚部3年間の手話・口話の獲得において,バイモダルな表現事例の推移について, The 17th European Conference on Developmental Psychology (2015.9)で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成24年以来,ろう学校幼稚部に観察研究に通い,3歳から3年間,継続して子どもたちの手話と日本語獲得を追ってきたが,文字学習が本格的に始まる小学校1年まで観察をし,データを得ることが本研究をまとめるにあたってより有益な示唆を得られると認識し,期間を延長することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
The 17th European Conference on Developmental Psychology にて発表する旅費,および1年間,観察先に通う旅費等にあてる。
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Research Products
(1 results)