2012 Fiscal Year Research-status Report
立体イメージの形成―『折り紙』を使った心理学的研究
Project/Area Number |
24530840
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shigakkan University |
Principal Investigator |
丸山 真名美 至学館大学, 健康科学部, 准教授 (40413314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶田 正己 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 名誉教授 (70047231)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 折り紙 / 立体的変形 / 平面的変形 / 折り図の読み取り |
Research Abstract |
本研究の目的は、2次元イメージから3次元立体イメージへの変換のメカニズムについて解明することである。そのための研究素材として、日本の伝統文化であり、なじみ深い遊びである「折り紙」を使用した。 「折り紙」は1枚の紙(いわゆる2次元的物体)に「折る」という操作を加えて3次元立体物に変形させるものである。また、平面に描かれた「折り図」をみて折ることは、2次元イメージを実際の空間においてどのように実行するかという3次元イメージに変換するという機能も必要とする。 研究初年度は、われわれがどのように折り紙を折っているのかという「折りのプロセス」を詳細に検討することから始めた。対象は成人であった。通常の「折り鶴」と「変形鶴」を折る課題を行った。折り方の分析の結果、②手順どおりに機械的に折る方法、出来上がりの立体をイメージしておる方法の2通りの折り方があることが示された。 また、「折り」の性質について2種類に分類し、「折り鶴」を折る一連のなかでの各折りの所要時間を検討した。「折り」は、たにおり・やまおり・だんおり・まきおりといった「平面的変形」と、なかわりおり・かぶせおり・四角おり・ふくろおりといった「立体的変形」の2種類に分類した。その結果、「平面的変形」は所要時間が短く、机上での操作が多いことが明らかになった。「立体的変形」は所要時間が比較的長く、空中で操作されることが多いことが示された。 折り紙初心者の成人は、「折り鶴」の折り方を一度学習すると折り方が一部変更された「変形鶴」(立体的変形)を折ることに困難を示さないが、「折鶴」を折ることができる10歳児では、「変形鶴」の変更された折りに既有の折り方を適用できないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
折り紙をどのように折っているかについて詳細に分析したことにより、以下の知見を得られた。 ①想定していた事項の確認ができた。 (1)「折り」の性質による区分を行い、難易度が「立体的変形」>「平面的変形」であることが確認できた。(2)プロセス分析によって、「立体的変形」と「平面的変形」では折り方が異なることが明らかになった。(3)成人の折り紙初心者の分析より、学習効果があることが確認できた。 ②今後の研究内容に示唆を与える知見が得られた。 (1)折り図という2次元表現から、立体イメージを生成することが重要な要因であることが示された。(2)成人と10歳児の比較において、10歳児は折り図をみて折ること、とくに「立体的変形」に困難を示すことから、空間認知能力が関係していることが示唆された。(3)このことから、発達要因を実験に組み込むことの有用性が示唆された。(4)折り紙の難易度を、「立体的変形」と「平面的変形」によって定義・操作できることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
①折り紙の難易度を低・中・高と設定し、それらの折り方のプロセス分析と各被験者の折り紙経験(学習量)と空間認知能力の関係を検討する。 ②学習要因の検討:新規な作品をマスターするまでの必要経験量を検討する。空間認知能力を統制要因とする。 ③折り紙は幼児期・児童期前半に頻繁に行われるため、幼児・児童の折り紙遊びの実態を自然観察する。さらに、折り紙能力の発達について、幼児・児童について②と同様の実験を行う。 ④折り図をみて折る条件と折っている様子のVTRをみて折る条件の学習効果を比較し、2次元イメージから3次元イメージへの変換の質的分析を行う。 ⑤折り紙名人と呼ばれる折り紙熟達者の、折りのプロセス、新作折り紙を構想するプロセスについてケーススタディを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①研究の成果公表のための使用 (1)研究成果の発表のための参加と旅費:国内学会での発表、シンポジウムの実施。(2)国外の学会での発表。 ②研究遂行に必要な使用 (1)実験機材の購入:VTRを使用した集団での実験を行うためのプロジェクター等の購入。(2)観察・ケーススタディのための旅費④データ保存のための記録媒体の購入(3)折り紙・イメージ変換に関する書籍の購入(4)被験者への謝礼(5)実験素材の折り紙の購入。
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Research Products
(10 results)