2012 Fiscal Year Research-status Report
対人恐怖症(社交不安障害)の心理発達的要因を探る:嫌悪判断を中心に
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24530867
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
相澤 直樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10335408)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 対人恐怖症 / 社交不安障害 / 対人関係 / 臨床心理学 / 発達心理学 |
Research Abstract |
平成24年度については下記の研究成果を得た。 1.年度当初より,研究代表者が対人恐怖症(社交不安障害),ならびに,嫌悪判断(敵意帰属)に関する国内外の図書,研究論文,その他の文献資料を広範に収集し,それらを分析する作業をおこなった。その中で,特にこれらの精神障害に関する心理発達的要因と,児童青年を対象とする場面想定法による意図判断測定法に関する先行知見を抽出整理する作業に取り組んだ。 2.対人恐怖症(社交不安障害)の心理発達的要因に関する質的な考察を行うため,自験例を含む臨床症例について検討した。その中で,典型的な特徴を示した視線恐怖症の青年男性の一症例を日本心理臨床学会第31回秋季大会において事例研究として発表した。心理発達的観点からの事例解析,発表に対する質疑を通じて,対人恐怖症の心理構造として受動的な自他の未分化さ,ならびに,葛藤や思いなどの主観的体験の優位性が関連することが明らかになった。 3.対人恐怖症(社交不安障害)と嫌悪判断に関する最新の知見を得るため,研究代表者が,日本心理学会第76回大会,日本心理臨床学会第31回秋季大会,日本発達心理学会第24回大会のそれぞれにおいて関連する発表やシンポジウムに参加し,必要な資料の収集と当該分野の研究者との情報交換をおこなった。 4.以上の成果から,対人恐怖症(社交不安障害)と嫌悪判断の心理発達的要因として受動性,依存性,情緒不安定性,主観性の影響が考察され,これらの相互の関連を検討する調査研究の方法が検討された。その中で,児童を対象とする調査では従来の青年用の場面想定法の限界が指摘されたため,各発達段階に適した場面内容,刺激提示方法などの具体的な調査手法の修正についても検討した。 これまでの文献資料に基づく検討成果を紀要論文として公表する準備に取り掛かるとともに,次年度以降の予備調査と本調査に向けての実施計画を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の達成度を文献資料の収集整理,調査計画の立案と実施,成果の公表の観点から以下のように評価した。文献資料の収集と整理については,年度当初より対人恐怖症(社交不安障害)と嫌悪判断(敵意帰属)に関する国内外の図書,研究論文,その他の文献資料を広範に収集し,その読解に取り組んだ。すでに主要な知見は抽出できており,次年度にこれらの文献資料研究の成果を紀要論文として公表の予定である。以上の点から予定通りに進行しているものと評価した。調査計画の立案と実施については,特に児童を対象とした場合,研究開始当初予定していた一般青年向けの場面想定法では場面の内容や刺激の提示方法,回答の収集方法などが適しない可能性が指摘され,各発達段階に適した調査手法の検討が必要となった。そのため,これらの点を十分に考慮した手法を考案する必要性が生じ,その改良を踏まえて次年度に予備調査を実施することとなった。以上により予備調査の実施時期が次年度に繰り越されたが,おおむね想定される範囲での計画の修正であると評価した。成果の公表については,年度当初より自験例も含めた対人恐怖症(社交不安障害)の症例を収集し,それらの成果を日本心理臨床学会第31回秋季大会において事例研究として発表した。以上のことから成果の公表については予定通り実施したものと評価した。以上のような観点から研究計画全体の達成度としては,おおむね順調に進展しているものと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の進展状況を踏まえ,今後の研究の推進策として以下の点を講じることとした。 1.文献資料の収集整理としては,これまでの成果の中間報告にあたる資料論文を作成し,大学紀要論文への投稿を通じて公表することとする。その後も,最新の国内外の書籍,研究論文,その他の文献資料,ならびに,学会や研究会における研究者間での情報交換を継続し,調査研究手法の確立と結果の分析に資する基礎的知見の集積をめざす。とくに,場面想定法については各年齢段階に適する場面内容,刺激提示方法,回答方法に関するこれまでの知見を緻密に分析し,調査研究の実施に資する知見を得る。 2.調査研究については,各発達段階に適する手法の開発をおこなう。その際,上記の先行知見だけでなく,発達研究に従事する他の研究者から直接助言や指導を得ることとし,そのためにふさわしい同分野の研究者に連携研究者や研究協力者としての協力を求める。それらの研究者と間で,妥当な刺激場面の設定,刺激提示の方法,回答の収集方法について十分に討議して,必要な予備調査を実施する。以上の手続きにより,各発達段階に適した最終的な本調査の手法を確立することを目指す。 3.調査の実施については,調査協力校との密接な連絡調整を行うこととする。とくに倫理的な諸配慮については,神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究倫理審査委員会の承認を得る。なお,昨今の社会情勢により一般校における調査実施が困難な場合には,附属校園のおける調査実施を主体とすることも併せて検討する。 4.成果の公表については,国内の心理学関連諸学会における口頭,ポスター形式での学会発表,学術専門誌,ならびに,大学関連の紀要論文への論文投稿などに取り組む。その際,神戸大学学術成果リポジトリ等の学術データベースを積極的に活用するなどして,研究成果の効率的,かつ,円滑な社会への還元を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度における次年度使用額は,研究計画の中で調査方法を再検討する必要性が生じたため,予備調査で用いる予定であったテスト用紙などの調査資料,調査実施にかかわる旅費等の経費等の執行が次年度に繰り越されたためである。平成25年度においては,上記の支出も含めて,以下の使用計画に則り研究費を執行する。 年度当初より,国内外の資料収集のため,対人恐怖症(社交不安障害),認知・発達心理学関連の書籍,資料の取り寄せや購入を行う。また,主に8月から11月にわたって開催される国内の心理学関連書学会に参加し,必要な資料の収取と情報交換をおこなう。調査手法の作成や研究データの分析のために必要なパーソナルコンピューターを1台年度当初に購入するとともに,統計解析ソフト,刺激作成用の映像・音声編集ソフト,データ記憶媒体等を購入する。研究方法の確立後に,6月から9月にかけて予備調査,本調査に必要となる心理テスト用紙等の調査資料を購入とともに,調査票印刷等のために印刷費が必要となる。10月以降の調査実施に際しては調査旅費が必要となる場合がある。調査データの分析の補助として,12月以降に研究協力者を1名雇用する。また,研究協力者,連携研究者とともに適宜研究打ち合わせ会議をおこなう。成果の公表のために,心理学関連の諸学会への発表のためのポスターの作成,投稿論文作成のための印刷費が必要となる予定である。
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Research Products
(1 results)